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年頭所感-日本ロジスティクスシステム協会 大橋徹二会長

お知らせ詳細

お知らせ

当会の大橋徹二会長(コマツ 取締役会長)より、新年のご挨拶を申し上げます。

物流統括管理者 連携推進会議(J-CLOP)を通じた持続可能な社会の実現に向けて

2025年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申しあげます。

国内外を取り巻く経済環境や社会が急速に変化するなかで、アメリカにおいてトランプ政権が発足することになり、保護貿易的な動きが強まっております。予測困難な外部要因が、グローバルサプライチェーンの安定性や効率性に影響を及ぼすことが懸念されるところです。

また、近年の猛暑、集中豪雨、迷走する台風などの異常気象が、日本のみならず、地球規模で発生しており、もはや日常となりつつあります。我が国は2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを定めましたが、その期限は残すところ5年に迫っております。今後のアメリカにおけるエネルギー政策が変化すると、気候変動対策の進展が停滞することも懸念されますが、私たちはサプライチェーン全体の脱炭素化の取組みをこれまで以上に推し進める必要があります。

国内においては、国際的なエネルギーや食料価格の変動による物価高騰が続いております。加えて、人口減少や労働力不足といった構造的な課題が深刻化し、限られたリソースを最大限に活用するための創意工夫が求められます。物流・ロジスティクスにおいては、2024年5月に改正物流関連二法が公布、さらに2025年1月には政省令が施行されるなど、持続可能な物流・ロジスティクス実現のため、行政による規制的な措置も含めた対応が進められているところです。

JILSでは、物流・ロジスティクスの効率化を通じた持続可能な社会実現のため、調査、研究・開発、普及、個別支援など、産・学・官の連携と多くの協力者の支援のもと、様々な活動を進めてまいりました。国内外において経済活動が活発化しているなか、今後も物流・ロジスティクスの重要性をより一層産業界に普及させ、経営課題として取り扱っていくことが重要です。

JILSは、「ロジスティクスコンセプト 2030」や「メタ・ロジスティクス」において、企業価値の向上と社会課題の解決を目標とするロジスティクスの重要性を訴えてきており、2025年の活動方針として次の3つを掲げます。

  1. 持続可能な社会の実現:物流統括管理者 連携推進会議
    (J-CLOP:JILS CLO(Chief Logistics Officer) Partnership)
  2. HRM(Human Resource Management)の推進と企業価値向上
  3. LX(Logistics Transformation)による全体最適の実現、標準化の推進

1.持続可能な社会の実現:物流統括管理者 連携推進会議(J-CLOP)

喫緊の課題である「改正物流関連二法」への対応ついて、JILSは、「物流統括管理者 連携推進会議( J-CLOP)」を展開し、産・学・官連携のもと検討を進めます。J-CLOPは、行政の動向に合わせ、活動を整備、認知、遵守、成果/評価、発展の5つの段階に分け、産業界をはじめとする社会全体に対し、事業を通じた支援を継続的に行ってまいります。特に、経営層に対して全体最適の視点から物流・ロジスティクスの問題に目を向けるための活動を強化します。また、多重下請け問題については、関連団体と連携を図りながら対応策を検討してまいります。

2023年度から、企業の人的資本に関する情報を「有価証券報告書」に記載することが義務付けられております。JILSでは、人的資本経営推進委員会を設置し、「有価証券報告書」の開示項目の物流企業向けガイドライン(標準項目)の検討、作成を進め、物流企業の「人的資本経営」への対応を支援いたします。

さらに、21世紀末までの気温上昇を1.5度に抑えることに貢献するため、2050年のカーボンニュートラルをはじめとしたSDGsの目標達成を意識した活動を検討してまいります。物流・ロジスティクス分野におけるSDGsへの取組みについて、2025年度は特に「女性活躍推進」に焦点をあて、関係者が集い、情報共有・交流を進める「場」を設置し、現状や課題、取組事例の収集や普及啓発を行います。グローバル化への取組みとしては、国際物流強靭化推進研究会の活動を通じて、グローバルサプライチェーンのモデル、課題および事例等を提示し、世界的なビジネス環境の変化に対応する企業を支援いたします。

2.HRMの推進と企業価値向上

ロジスティクスが「経営課題を解決する非常に強力な手段」として認識され、経営戦略の一つとしての地位を確立するため、経営課題の解決能力に優れた企業の特性を抽出し、そのデータをもとに報告書を作成するとともに、広く企業に活用いただける手引書を作成いたします。

2023年度に高度物流人材に着目し、物流DX人材の能力要件をまとめましたが、より多くの方に高度物流人材の必要性を認知していただくための普及活動を行っていくとともに、CLOのあるべき姿についての検討を進めてまいります。あわせて、物流統括管理者に求められる役割や能力要件をまとめ、物流統括管理者向けの人材育成メニューの開発にも着手いたします。

また、各種講座やセミナー等の人材育成事業を継続的に展開するとともに、採用、教育、人事評価、人材配置など、従業員を人的資源と捉えて有効活用するためのHRMについても検討を進めます。

物流現場改善推進においては、物流現場改善の具体的な「取組み」、取組みを推進する「企業」、そして取組みの中心となる「個人」を支援することで、その定着を目指し、活動を続けてまいります。

3.LXによる全体最適の実現、標準化の推進

AI技術の目覚ましい進歩とそれに伴うテクノロジーの進化によって、物流・ロジスティクスの効率化のための様々なソリューションが提案、実装されています。労働力不足への対応としてのオペレーション改革のみならず、テクノロジーを活用したデータドリブンなロジスティクスの構築により、企業の経営とロジスティクス戦略を連携させ、全体最適を実現することを目指します。

企業内、企業間をまたがってテクノロジーを有効に活用するためには、ハード、ソフトの標準化のみならず、用語や業務プロセスなどを含む広義の標準化が欠かせず、JILSは標準化活動にも注力してまいります。

2025年9月には、「物流を止めない。社会を動かす。」をテーマに、物流、ロジスティクス関係者が一堂に会する物流専門展示会「国際物流総合展 2025 第4回 INNOVATION EXPO」を、東京ビッグサイトにて開催いたします。また、2026年2月には「持続可能なロジスティクス構築への道標 ~“新たな労働力”活用のヒントはここに~」をテーマに、物流・ロジスティクスの生産性向上に資する「ロジスティクスソリューションフェア 2026」を、同じく東京ビッグサイトにて開催いたします。

本年も当協会は、わが国産業活動と国民生活の持続可能な発展に向け、経済産業省ならびに国土交通省等、関係各省庁の施策と歩調をあわせるとともに、産・学との連携を強化し、全力をあげて課題に取り組んでまいります。会員の皆様をはじめ、関係各位の一層のご支援とご協力を心からお願い申しあげ、新年のご挨拶といたします。

年賀広告の紹介-機関誌「ロジスティクスシステム」2025年新年号掲載









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