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会長挨拶

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遠藤信博

公益社団法人
日本ロジスティクスシステム協会

会 長 大橋徹二
(コマツ 取締役会長)

設立30周年のご挨拶

 このたび日本ロジスティクスシステム協会の会長を仰せつかりました大橋徹二でございます。よろしくお願い申しあげます。
 当協会は、2022年6月に設立30周年を迎えることとなりました。会員の皆さまをはじめとする産官学からのご支援の賜物であり、これまでのご厚情に心より感謝を申しあげます。

 当協会は、バブル経済崩壊後の、わが国経済が大変苦しい時期に設立されました。当時の企業は、需要の喚起と生産性の向上に腐心し、多様化する消費者の嗜好に対応するために、生産・流通において、多品種少量化を進めた時代でもありました。企業経営においては、物流コストの削減のみならず、市場の世界的な拡大を実現するべく、ロジスティクスが注目されるようになります。このような背景から、需要に調達・生産・流通を同期化させるロジスティクスシステムを構築するために、各界が一体となって、必要な方策を推進する場が求められていました。こうした時代の要請を受け、当協会は、1992年6月に、物資流通の円滑化をめざして設立されました。産業界、行政、学識経験者など、高い志を持つ関係者の総意に基づき、当時の通商産業省と運輸省からの支援を受け、両省共管の社団法人として発足しました。
 設立の目的は、ロジスティクスの高度化による生産性の向上と環境問題などの外部不経済の克服等による、産業の発展、国民生活の向上、国際社会への貢献です。以来、理想をもってロジスティクスシステムの将来像を描くべく、産官学の利害関係者とともに歩んできました。現在に至るまで、現状を把握し、あるべき姿を実現するために、調査研究、開発普及、提言や政策立案への支援、経営指導、人材育成を柱とする活動を続けています。

 設立から30年が経過し、企業経営や消費者をめぐる潮流は大きく変化しました。企業は、成長と拡大だけでなく、企業価値の向上を志向するようになります。追い求めるものは、売上からキャッシュフローへ、単体から連結決算へ、規模の拡大から投資効率の向上へ、更にESGを意識した経営へといった変遷をたどります。物流面では、物流二法(貨物自動車運送事業法、貨物運送取扱事業法)の施行が規制緩和をもたらし、その後の過当競争につながっていきます。物流不動産の証券化が進み、外資も含めた投資を呼び込み、巨大な物流施設が誕生しています。消費サイドにおいては、その嗜好や消費行動が多様化し、EC(電子商取引)やシェアリングエコノミーが日常のものとなりました。ネット上ではフリーマーケットや個人同士の取引も盛んになっています。一方で、労働人口の減少により、モノが運べなくなるリスクが現実のものとなりつつあります。環境面においては、地球温暖化を防止するために京都議定書やパリ協定が決議されましたが、天災や風水害は収まる気配をみせていません。
 こうした状況に対応するべく、企業経営におけるロジスティクスの在り方も、この30年で大きく変化しています。キャッシュを最大化させるためにサプライチェーンマネジメントが浸透しました。経営効率の向上のために、ロジスティクス関連資産や在庫を持たないオフバランス化が進み、物流子会社の、親会社からの独立が続きます。資本コストをにらみつつ、企業価値向上につながる効果的な投資が進められるようになりました。物流企業は専門領域に磨きをかけ、3PL企業が隆盛しています。高度な能力を持つ人材が活躍し、荷主の企業価値向上を支援するようになりました。ECやフリーマーケットの拡大は、ラスト1マイルを担う物流システムの高度化が支えています。現場においては、労働力不足に対応するべく、自動化省人化が急速に進展しました。マテハン機器の高度化も進み、今や、トラックの自動運転すら視野に入っています。
 このように、企業経営、消費者、社会をめぐる30年の動きを振り返ると、時代の経過とともに、ロジスティクスは存在感を増すばかりであることがわかります。今日において、ロジスティクスは重要な社会インフラであり、経営課題・社会的課題を解決するための重要な方策である、というポジションを確固たるものにしました。

 持続可能な社会の実現に向けて、当協会は、2020年1月に、『ロジスティクスコンセプト2030』を発表しています。このコンセプトでは、2030年に向かって私たちが目指すべきロジスティクスの姿を描き、その実現に向けて7つの提言を行いました。そこに示されている社会の持続可能性、生産性の向上、標準化、デジタル化といった課題は、個社の取り組みだけでは解決できません。そこで、当協会は、設立30周年にあたり、新たに「共に創る持続可能な社会」をスローガンに定めました。あわせて、業種や業態を超えた共創を目指す高次元のロジスティクスである「Meta-Logistics」をロゴにあしらい、共創の重要性を訴えます。このコンセプトやスローガンに沿って、持続可能な社会の実現や、直面する諸課題の解決に向けて、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 今後とも、関係者の方々のご支援、ご協力と協会活動への積極的なご参画をいただけますよう、あらためてお願い申しあげます。

2022年6月