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サプライチェーンの強靭化へ「GXの実現にも不可欠となる、DXに向けた投資の拡大・イノベーションの推進」-2023年版『ものづくり白書』

お知らせ詳細

行政・他団体

経済産業省、厚生労働省、文部科学省は、ものづくりに関する基礎的なデータと、その年の課題や政府の取組を掲載する第1部と、ものづくり振興施策集である第2部からなる2部構成とする、2023年版の「ものづくり白書」を6月に発行、公表しています。

2023年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)

現場の強みを活かしつつ、サプライチェーンの最適化に取り組み、競争力強化を図ることが必要として、
GXの実現にも不可欠となる、DXに向けた投資の拡大・イノベーションの推進により、生産性向上・利益の増加につなげ、所得への還元を実現する好循環を創出することが重要と提示しています。

◆製造業を取り巻く環境の変化と重要となる取組
<環境変化>
①ロシアによるウクライナ侵攻等による国際情勢の不安定化に伴う、サプライチェーン寸断リスクの高まり
②脱炭素の実現に向けた世界的な気運の高まり
③約11万人の人手不足、原材料やエネルギー価格高騰に伴う生産コスト削減・適正な価格転嫁の重要性増加
<重要な取組>
①迅速な生産計画の変更・資源の再配分によるサプライチェーンの強靭化・生産能力の安定的確保
②サプライチェーン全体のカーボンフットプリントの把握
③省人化・自動化による生産性の向上・省エネ化 
⇒個社単位での対策は困難・非効率であり、デジタル技術による、サプライチェーンに係る事業者全体の取組の可視化・連携が重要。

◆製造業のビジネス環境の変化と重要となる取組
<ビジネス環境変化>
①製造に関わる全ての工程を標準化・デジタル化し、サービスとして製造事業者に販売するビジネスモデルの誕生
②そのサービスを活用して、生産性・エネルギー効率性の向上を実現する製造事業者の登場

<重要な取組>
① データに基づきサービスを改善し、顧客との関係の長期化、利益獲得手段を多様化
② 市場調査・企画から製造・物流・販売までの一連のプロセスを最適化し、競争力を強化

⇒サプライチェーンに係る事業者や消費者が、お互いにデータを共有できるようになったため、サービス事業者、製造事業者、消費者の利益向上を実現

気になった点がひとつ。
サプライチェーン安定化・強靭化に向けた企業のこれから取組*として、脱炭素への対応、デジタル化の推進、2次以降のサプライヤーの把握、が上位にあがっていますが、輸送手段の多様化(陸海空運)や在庫の積み増し、取組みの位置づけが下がっている点、相対的な問題なので仕方がないと思いつつ…。

国際物流強靭化推進研究会のおける各企業の声として、国際海上輸送費(運賃)が低下傾向にあり、BCPを整備するうえでも「見える化やシステム化」の課題感が大きいものの、ROIの観点から投資が進まないとする企業が多いのが実情で、生産や販売、財務も巻き込んだ取組みが求められます。
また、輸送手段の多様化や在庫の積み増しも、事業部をはじめとして、生産や販売等の費目に紐づけ、評価が出来ているのか、そこが紐づいていないと企業全体への影響(財務諸表等)をマネジメントすることが難しいのではないかと思われます。

コロナ禍の混乱等で露呈したとおり、物流の諸活動は調達や生産、需給、販売等に大きく影響します。
足元の「物流(包装、輸送・配送、保管・荷役、流通加工、情報システム)を「丸投げ」ではなく、しっかり管理(可視化、定量化、デジタル化等)できるようしておかない、GXやDXはおぼつか無いのはではないでしょうか。

*サプライチェーン安定化・強靭化に向けた企業のこれから取組(概要版、P5、図表3)

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文責:JILS総合研究所 遠藤直也


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