国際物流総合展2026 実行委員インタビュー

ロジスティクスに「期待」される時代をつくる
対等なパートナーシップで社会課題解決を

ロジスティクス強調月間2026 実行委員会 副実行委員長
コクヨ株式会社 執行役員 ビジネスサプライ事業本部長
株式会社カウネット 代表取締役社長 兼 CLO
コクヨサプライロジスティクス株式会社 取締役
宮澤 典友 氏

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会は、9月・10月を「ロジスティクス強調月間」と定め、社会全体にロジスティクスの重要性について広める活動を展開する。2026年度のテーマは「経営とともに進化するロジスティクス ~持続可能な社会と企業価値向上を支える新たな挑戦~」。物流統括管理者(CLO)の設置が制度として求められる時代、ロジスティクスと経営の理想の関係とは――。実行委員会の副実行委員長である宮澤典友氏(コクヨ株式会社 執行役員/株式会社カウネット 代表取締役社長)に、テーマに込めた想いや今後の展望を伺いました。

宮澤 典友
Noritomo Miyazawa

ゼネコン、ゲームメーカー、総合商社を経て、BtoB eコマース業界へ。経営管理、EC、物流管掌およびCDXOを歴任。2022年6月コクヨ株式会社に入社。同年12月、コクヨグループで購買管理システムおよびEコマースサービスを提供する株式会社カウネット代表取締役社長に就任。同時に、コクヨ執行役員ビジネスサプライ事業本部長として国内流通事業全般を統括する。2024年10月よりコクヨサプライロジスティクス株式会社取締役を兼務。
2026年、カウネットのCLO(Chief Logistics Officer/最高物流責任者)に就任。ロジスティクス強調月間の実行委員会副実行委員長を務める。

「うまくいって当たり前」はもう終わり
進む、ロジスティクスの経営課題化

―――「ロジスティクス強調月間2026」のテーマは「経営とともに進化するロジスティクス」です。あらためてテーマに込めた想いをお聞かせください。

テーマは多様な業界における物流分野のスペシャリストである、「ロジスティクス強調月間2026推進委員会」約20名で議論して決定しました。本テーマの背景には、ロジスティクスの課題がそのまま企業の経営課題となっている昨今の状況があります。

近年、サイバー攻撃や自然災害の多発により、モノが届くことの大切さが改めて見直されるようになりました。誰もが当たり前に利用していた物流システムが、実は、現場の方々の努力に支えられているのだと実感する出来事が重なり、世の中からの見方が変わったのです。

加えて、改正物流効率化法により、2026年4月から前年度の取扱貨物重量が9万トン以上など、一定の基準を満たす「特定荷主」に対して「物流統括管理者(CLO)」の選任が義務化され、国からロジスティクスをより経営に近いポジションに位置付ける後押しがありました。

物流に関する課題を特定部門だけで解決するのは過去の話で、これからはロジスティクスを会社経営の課題として捉え、さらに大きな視点で見れば、国全体の課題でもあると位置付ける必要が出てきました。そのような背景から「経営とともに進化する」という言葉を今年度のテーマに選んだのです。

―――環境の変化を受けて、企業にとってのロジスティクスの重要度が上がったということでしょうか?

その通りです。「人材不足」「業務効率化」などこれまで重視されてきた経営課題は依然として重要です。加えて、モノが届かないことで引き起こされる問題が、大きな衝撃とともに認知されたことでロジスティクスの優先順位が以前よりも高くなってきているのだと思います。

選任が義務化された物流統括管理者(CLO)
企業の永続性を高め、サービスの質を引き上げる

―――2026年4月より、特定荷主等に選任が義務付けられた物流統括管理者(CLO)の役割を教えてください。

端的に言えば、ロジスティクスの課題を経営課題と捉え直し、全社を巻き込みながら解決に導くことがCLOの役割だと思います。ロジスティクスの社内での位置付けが変わることで、人員配置やリソース配分の優先順位も上がります。

―――従来の物流部門責任者と、CLOはどこが違うのでしょうか。

各部門の執行権限を持つ経営メンバーと同じ目線で議論し、能動的に企業方針に参画できることは、物流部門責任者との大きな違いです。

これまでロジスティクス関連業務はいち部門の中で完結することが当たり前で、「誰かがやっておいてくれるもの」と思われがちでした。その裏では、毎日のように発生する様々な課題について、現場のメンバーが主体的に解決し、会社の根幹を支え続けてきました。自分たちだけで完結する姿勢、裏方に徹する美学は素晴らしいですが、限界もあります。

特に昨今は、荷主企業の要望を叶えるために運送会社の負担が増えており、このままだと輸送力不足になって消費者の暮らしに影響する可能性があります。運送会社からすると荷主企業のニーズに応え続けるしか生き残る道はなく、この課題を抜本解決するには、荷主側の事業やサービスを変えなければなりません。

しかし、サービスを変えればコストが上がり、巨額の投資が必要になることもあります。そのような経営に関わる改革を、物流担当者だけで提案・実行することは難しいです。経営の中核で議題として取り上げ、議論し、他部署も巻き込みながら実行できるポストを新たに用意することは非常に重要です。

―――ロジスティクスを経営課題に位置付けることで、具体的には何が実現できるのでしょうか。

大きく2つです。1つ目は企業の永続性を高めること、2つ目はサービスの質を上げることです。

企業の永続性を高めるとは、将来を見越して施策を打ち続け、物流が「止まらない」状態を維持することを指します。止まってしまっては再開までに時間がかかり、最悪の場合、手遅れになることもあります。災害やサイバー攻撃など有事に備えた強い物流網を構築することはもちろん、需要の変化や法改正などの環境変化を受け、先を見越した一手を常に打ち続ける必要があるのです。

サービスの質を上げるとは、ロジスティクスを起点とした既存サービスのブラッシュアップや新サービスの提案を指します。例えばカウネットの場合、在庫表示機能を刷新し、在庫僅少時の具体的な数量や、欠品時の入荷予定日まで明示する仕組みを整えました。お客様が購入可能な数やタイミングを正確に把握できるようにしたことで、お客様の最適な購買判断をサポートしています。

カウネットが大切にする3つの視点
企画・提案型の物流部門になるために

―――カウネットでの取り組み事例を教えてください。

当日選択式サービスでの配送前倒し、Webからの注文キャンセル機能の導入、「カウ得!ポイントUPカレンダー」でお客様の購買計画の促進と受注平準化の実現など、ここでは挙げきれないほど様々な取り組みを積み重ねてきました。

サービス設計から調達、保管、配送に至るまで、サプライチェーン全体を俯瞰して幅広い施策を実行しています。その結果、強い物流システムの構築と併せて、サービスの質向上につながる取り組みを実行できています。

―――数々の取り組みを同時に進める中で、特に意識してこられたことはありますか。

大きくは3つあります。1つ目は社内のロジスティクスへの関心を高めること、2つ目は社外と比較して評価されるレベルを目指すこと、3つ目は企画・提案型の物流部門になることです。

1つ目の社内のロジスティクスへの関心を高めるとは、発信活動を通じて自分たちの活動内容をアピールすることを指します。特にロジスティクス関連の仕事は、自分たちから積極的に発信しなければ、その価値や取り組みが社内に伝わりません。

これまではそれでもよかったのかもしれませんが、経営課題として取り組むにあたって、社内からの認知は重要です。社内報や全社会議などの機会を逃さず、今現場で何が起きているのか、自分たちが何をやっているのか、どのような想いで取り組んでいるのかなどを、できる限り発信しています。

2つ目は、社外と比較して評価されるレベルを目指すことです。物流に限らず、自部署と他部署とを比べて「自分たちだって頑張っているのに評価されない」と不満を感じる社員は多いです。

そこで私たちは、交流会やイベントに参加し、積極的に他社との接点を持ってきました。日本企業全体から見て自分たちがどれほどのレベルかを知り、目標を見つけることで、より前向きに仕事ができるようになります。また、他社との交流を通じて、自分たちの仕事が認められる機会が増えれば、モチベーションはさらに高まります。

3つ目は、自社事業に対してインパクトのある提案を発信していくロジスティクスへと転換することです。社内広報や社外との交流も、最終的にはここにつながります。現場で働く一人ひとりが自部門に閉じず、他部門も巻き込みながら新しい取り組みを提案し、実現していく姿勢を大切にしました。

カウネットでは宮澤社長自らがCLOに就任したことをプレスリリース。物流改革を経営の最優先課題として全社で推進する姿勢を明確にしている。

関心の先にある「期待」を生み出す
立場を超えたフラットな連携が課題解決の鍵

―――2026年のロジスティクス強調月間も、先進事例の発表会や物流関係者のための交流会など、様々なプログラムが用意されています。あらためて、本取り組みの意義について、宮澤さんのお考えをお聞かせください。

経営に関わる方々に、ロジスティクスへ関心を持っていただくことが第一の目的です。ただ、関心だけで終わってはいけないとも考えています。目指すべきは、ロジスティクスに期待をしてもらうことです。

期間中は様々なイベントが用意されており、普段ロジスティクスに携わっていない経営層の方々の目に触れる機会もあるでしょう。そのような方々がロジスティクスの可能性を知り、自社内の物流部門に対して「こんなことはできないのか」といった相談をするようになれば、ロジスティクス強調月間は成功といえるでしょう。

物流部門からすると、すぐには応えられないかもしれません。それでも、期待されること自体が大きなモチベーションになります。その結果、やり遂げて、さらに期待されるようになるという循環まで生まれれば、これ以上のことはありません。長らく「うまくいって当たり前」と思われていた領域だからこそ、期待されることの意義は大きいと考えています。

―――今年度のプログラムの中で、特に注目してほしいものはありますか。

10月6日(火)、10月19日(月)に行われる「ロジスティクス全国大会」にはぜひご注目いただきたいです。

各業界のトップランナーによる基調講演や最新事例の共有、ロジスティクス大賞(※)の受賞企業による発表など、他社の取り組みについて知る機会が多く用意されています。毎年、様々なテーマが取り上げられるので、経営者や物流責任者の方々にとって自社に持ち帰れるヒントが多くあるはずです。

※ロジスティクス大賞:ロジスティクスの推進に向けて、優れた実績をあげたと認められる企業、機関、団体を表彰する制度。優れた実績や成果を顕彰することで、ロジスティクスの社会的浸透と、ロジスティクス部門および関係者の意識高揚を図る。

また、期間中に行われる「Logistics Meetup」「物流統括管理者連携推進会議」などの情報交流の場にもぜひ注目いただきたいです。時間がない方は、少しだけ参加していただく形でも構いません。他社とつながりを持ち、連携のきっかけが生まれること自体に価値があると思います。

―――最後に、経営者や物流担当者の皆様へメッセージをお願いします。

ロジスティクスには社会全体に関わる課題も多く、個社だけでは課題解決ができないこともあります。だからこそ、企業間の連携が必要です。荷主か運送事業者かに関わらず、対等なパートナーシップを築きながら、人手不足をはじめとする社会課題の解決を皆で目指したいです。

CLO設置義務化やロジスティクス強調月間をきっかけに、ロジスティクスを経営課題として捉える企業が増え、より経営に近いポジションの方々が集まって、物流を担っている方々との交流が増えることを期待しています。経営層の参画は企業間連携のレベルを数段に上げることにつながると考えています。

理想的な連携は、すでに有事のときは実現しています。災害で既存の流通網が使えなくなったときは、業界をまたいで協力し、荷主も物流事業者も関係なく、皆で被災地へと向かいます。簡単に言ってしまうと、同じことが平時でもできればいいのです。

なんとしてもやり遂げるのだという意思さえ揃えば、業界をまたいだ対等な関係性での連携と、それによる社会課題解決は平時でもできるはずです。ロジスティクスに関わるすべての日本企業のために、そして日本社会全体のために、ぜひ幅広い企業で一丸となって、長年にわたる業界の課題を一緒に解決できればと期待しています。