物流効率化法改正による荷主の義務とは

貴社の物流は新しい法律を守っていますか?
-物流効率化法改正による荷主の義務とは-

1 荷主に課された新しい義務

物流の2024年問題(※)は終わったわけではありません。今後も何も対策を講じなければ輸送力不足による物流の停滞が懸念されます。こうした中、物流の持続的成長を図るため、荷主・物流事業者に対する規制的措置が定められました。

すべての荷主・物流事業者に、物流効率化のために取り組むべき措置の努力義務が課せられ、また一定規模以上の特定事業者に対し、中長期計画の策定や定期報告等が義務付けられます。

※物流の2024年問題とは

道路貨物運送業においては、2024年4月から働き方改革関連法施行により時間外労働の上限(休日を除く年960時間)規制等が適用されました。この規制は、「物流の2024年問題」と称され、とりわけ他の業態よりも労働時間が長いとされる道路貨物運送業については、労働時間が制限されることで、以下のような影響が懸念されています。

  1. 1日に運ぶことができる荷物の量が削減
  2. 道路貨物運送事業者の売上げ・利益の減少
  3. ドライバーの収入の減少
  4. 収入の減少による担い手不足

2 荷主に課された義務とは

すべての荷主に対する規制的措置(努力義務)は2025年4月から、一定規模以上の特定事業者に対する措置(義務)は2026年4月から実施されます。

以下の物流効率化に向けた取組を行うことについて努める必要があります

◇ 積載効率の向上等

(1回の運送でトラックに積載する貨物量を増加する)

◇ 荷待ち時間の短縮

(ドライバーが到着した時間から荷役等の開始時間までの待ち時間を短縮する)

◇ 荷役等時間の短縮

(荷役(荷積み・荷卸し)等の開始から終了までの時間を短縮する)

【特定事業者(特定荷主)の指定】

物流全体への寄与がより高いと認められる事業者を次の基準値により特定事業者として指定されます。

◇ 特定荷主及び特定連鎖化事業者

取扱貨物の重量 9万トン以上

【特定事業者(荷主)に生じる義務】

指定基準値以上の特定事業者は、中長期計画の作成や定期報告の義務が生じます。

◇ 届出・指定

期限:2026年5月末締め切り

前年度の取扱貨物重量が基準重量(9万トン)を超える場合は、荷主事業所管大臣に届出を行い、特定荷主の指定を受けなければなりません。

◇ 物流統括管理者(CLO)の選任

期限:特定荷主指定後すみやかに

物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられています。物流統括管理者は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者(重要な経営判断を行う役員等の経営幹部)から選任される必要があります。特定荷主の指定を受けた後、すみやかに物流統括管理者を選任し、届出しなければなりません。

◇ 中長期的計画の作成

期限:2026年10月末締め切り/計画内容に変更がない限りは5年に1度提出

定期的に判断基準を踏まえた措置の実施に関する中長期的な計画を作成することが義務付けられています。運送委託/貨物受渡しの全体像と改善の優先順位・方法を検討し、取引先との協議や施設整備などの長期的な対応を含めて計画することが求められています。

◇ 定期報告の提出

期限:2027年7月末締め切り/以降毎年度7月末締め切り

指定を受けた翌年度以降の毎年度、「努力義務」の実施の状況に関して報告する必要があります。判断基準の取組状況や荷待ち時間等を把握するとともに、参考情報欄で取引先との協議状況や施設の制約、業種特性等を可視化し、関係者の連携を図ることが求められます。

【指導・助言や罰則等の措置】

荷主事業所管大臣は、法律の規定に基づき、荷主に対して以下の対応を行うことができます。

◇ 指導・助言

運転者の荷待ち時間等の短縮及び積載効率の向上等を図る措置の適確な実施を確保するために、荷主に対して、判断基準を勘案して必要な指導・助言を行うことができます。(法第44条)

◇ 報告徴収・立入り検査

努力義務として課される措置に関する取組状況が著しく不十分な場合、勧告・命令をするために必要な限度で報告徴収や立入検査を行う場合があります。

◇ 勧告・公表・命令

特定荷主の運転者の荷待ち時間等の短縮及び積載効率の向上等を図る措置の実施に関する状況が、判断基準に照らして著しく不十分である場合は、特定荷主に対して勧告が行われる場合があります。

また、勧告に従わなかったときはその旨が公表され、さらに、正当な理由なく措置をとらなかったときは、当該措置を取るべきことを命令されることがあります。

命令に違反したときには、百万円以下の罰金が科せられます。

3 荷主の義務に対応するには
―JILS/物流統括管理者連携推進会議の支援活動―

取扱貨物重量が9万トン?ウチは該当するのかな・・・?

JILSでは、荷主企業が自社の売上高から物流量を推定するための「物流原単位」について解説しています。この資料は、製造業、卸売業、小売業の各業種における出荷量および入荷量の原単位および年間貨物輸送量が9万トンに達する年間売上高の基準値について参考となる情報を提示することを目指しております。

特定荷主の基準である「9万トンボーダーライン」という物流量の目安として、これらの情報を用いることで、企業は自社の年間物流量を概算し、特定荷主に該当するかどうかの最初の判断基準と、以後の物流量計測に向けた検討材料としていただけることを狙いとしております。

法令順守のために何からはじめればいいのか・・・?

JILSでは、「物流統括管理者連携推進会議(略称J-CLOP)」を組織し、制度対応と実務をつなぐ正確かつ実用的な情報や能力開発プログラムの提供、荷主連携のためのプラットフォーム構築等を計画しております(2026年4月発足予定)。

是非J-CLOPにご参画ください。

物流統括管理者(CLO)に必要な能力を身に着けたいが・・・?

JILSでは、物流統括管理者(CLO)養成のための専門講座「ロジスティクス経営士資格認定講座」を開講しております。ロジスティクスの役割を経営の視点から捉え、各機能を総合的にデザインし、新たな戦略の立案、新たな事業・サービスの企画・実行、ロジスティクス改革等を実践することができるロジスティクス経営幹部(チーフ・ロジスティクス・オフィサー:CLO)を育成します。

努力義務に対応するための人材が足りない・・・?

JILSでは、物流・ロジスティクス、SCMの専門人材を育成する講座・コースを提供しています。講座・コースには、新入社員から経営者までの階層別研修、および専門領域に特化したテーマ別研修があります。

荷待ち荷役等時間、積載効率をどう可視化すればよいか・・・?

「物流統括管理者連携推進会議(略称J-CLOP)」でも本テーマのセミナー等を実施する予定です。またJILSではこうした知見を持つ人材を育成するため、物流現場改善をデータで議論、数値で管理し、改善を実践する物流現場改善リーダー育成専門講座「物流現場改善士資格認定講座」を開講しています。

他社はどのような活動をし、どのような成果を挙げているんだろう・・・?

「物流統括管理者連携推進会議(略称J-CLOP)」では、メンバー相互の情報交流のプラットフォームとして、自主研究部会の実施を計画しております。

活動が成果を挙げ、適切な評価を得るためにどうすればよいのだろう・・・?

JILSでは、産業界の生産性と収益性を向上させることを目的に、「ロジスティクスKPI活用の手引き」を発行しました。本手引きが対象にしたKPIは社内の連携を念頭においたものですが、社内の連携を拡張すれば、荷主と物流企業、発荷主と発荷主、そしてさらに、発荷主と着荷主という具合に、KPIを”共通言語”としたサプライチェーンを通じたロジスティクス連携にも適用できます。

物流の専門家に相談したいが・・・?

JILSでは、「社内研修」「コンサルティング」実施のための支援を行っています。

「社内研修」は各社オリジナルの教育メニューとして、日程、期間、対象、内容を決めたうえで実施いたします。

また、「コンサルティング」は人材育成に限らず、製造業、流通業、物流業を対象としてSCM改革、事業構造改革や、KPI等の管理制度の導入、物流ネットワークの再設計、ならびに物流現場改善等、様々なテーマに応じて、実施いたします。

4 物流事業者・ロジスティクスソリューションベンダーの皆様へ

JILSでは2026年4月に、「物流統括管理者連携推進会議(略称J-CLOP)」を組織し、制度対応と実務をつなぐ正確かつ実用的な情報や能力開発プログラムの提供、荷主連携のためのプラットフォーム構築等を計画しております。

物流効率化法改正の目的である物流の効率化、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容実現のためには、荷主企業はもちろん、物流事業者やロジスティクスソリューションベンダーの皆様のご協力が不可欠です。

是非、「物流統括管理者連携推進会議(略称J-CLOP)」の趣旨をご理解いただき、本活動のご支援をいただけますようお願いいたします。