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思考の多様性で物流を考える

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No.7(2023/2/1掲載)

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執筆者紹介

株式会社コクヨロジテム 企画推進室長 戦略人事プロジェクトリーダー 山本 紗代美

2019年に株式会社コクヨロジテムにキャリア入社。
事業成長を促進する人事戦略や風土改革に注力するため、戦略人事PJリーダーとして活動を開始。
2022年より経営戦略を担う現職。前職はコンサルタント。
※物流企業のHRM推進研究会 幹事

対談者紹介

實藤美来(さねとう みく)さん
東京大学 教育学部 4年

重度訪問介護従事者としての訪問介助や、脳性まひの生徒らの家庭教師として指導にあたる傍ら、障害をもつ方々にとって「自立生活」がどのような意味を持つのかについて、質的心理学的手法を用いた研究を行う。

対談者紹介

堀内基希(ほりうち もとき)さん
高崎経済大学 経済学部 経営学科

長寿企業研究、陽明学を用いた経営改革について、アート思考と東洋思想の類似性について研究を行う。

思考の多様性で物流を考える

23年の初コラムです。皆さま、どうぞ今年もよろしくお願いします。
年初ですので、コラム原点回帰というわけではないですが、タイトルに多様性というワードを戻してみました。

では、前回の座談会の続きから。

山本 現場の人を主人公にということで、寄り添いの必要性や物流のプロセスを見える化して社会に認知してもらうなど、様々な方向に話を発散してきました。物流業界の課題というか物流業界をどうしていきたいかということに話を少し戻してみましょう。

實藤 私は「デザイン思考×物流」ということかと思います。

山本:デザイン思考ですか、面白いですね。デザイン思考自体は私も個人的に興味があって少し学びましたよ。ぜひもう少し詳しくきかせてください。

實藤
 企業は既存事業の延長線上での拡大を目指していくというのが一般的だと思いますが、私はデザイン思考を活用しての拡大もありだと思います。以前、都市開発関連の授業で見聞きした中に、ロボット活用による観光客への町案内がありました。ロボットと共に旅をするというのは非現実ではありますが、コロナ禍でも利用できますし、このような既存の延長線上ではない飛躍した発想は期待感も持たせてくれます。物流においても、前例を抜きにしてどんどんプロトタイプを使ってみるとよいと思います。

山本
 たしかに、デザイン思考というと馴染みがないもののようにとらえてしまいますが、現場で働く方の改善していく思考と意外と親和性があるかもしれませんね。堀内さんは、デザイン思考と方向性は似ていますが、アート思考を研究していますよね?

堀内 そうですね、アート思考と東洋思想の類似性について研究していますが、日本でイノベーションを起こしてきた企業や経営者の考え方の中にアート思考を見出すこともできますし、今の物流業界にも有効だと考えています。

山本 デザイン思考とアート思考の違いはどのようなところですか?

堀内 デザイン思考は、お客様ファースト・顧客満足度アップ等を起点に考えていきますが、アート思考は、自分は何をしたいのか・何に幸福を感じるのか等を起点に考えます。(図1)

山本 物流×アート思考も非常に興味深いですね。変化が激しい外部環境の中で、問題や課題の答えは1つではないですし、誰も気づいていない問題を発見し提起できる能力が問われていると、人材育成の観点でも感じますので、私もこれらの思考は有効だと感じます。

図1

参考文献
:末永幸歩、『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』、ダイヤモンド社、2020年
:山口周、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』、光文社、2017年

物流業界全体をどうしたいかという問いに対して、偶然にもお二人ともから思考法のお話をいただきました。物流業界では、効率化や最適化など既存業務をどうするかを考えることが多く、論理的思考(図1)を使うことも使う人も多いように感じます。業界の外の立場から眺めた時に、お二人も無意識にそう感じられてこの思考の話をしてくれたのかもしれません。

そして、アート思考のように、発想を飛ばして考えるというようなことは、たしかに少ないように思います。座談会の中でもお話ししたように、私はこの思考は、物流業界において経営や企画的な業務をする人だけでなく、現場の人にとっても有用だと考えます。

自分が何をしたいのか、何を解決したいのか、ひいては何が幸せなのか、突き詰めて考えることは、その人の仕事に主体性を加えることになります。その仕事をすることがワクワク、楽しくさえなるかもしれません。

物流業界にそんな思考の多様性ももたらしつつ、
今年は「物流業界の皆様と、育て合う1年」にしたいと考えています。

というわたくしの年始の決意表明とともに、素敵な企画を考えましたので、どうぞお楽しみに。次回はそんなお話もさせていただきます。