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現場の働き手を主人公に

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No.6(2022/12/26掲載)

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~執筆者紹介~

株式会社コクヨロジテム 企画推進室長 戦略人事プロジェクトリーダー 山本 紗代美

2019年に株式会社コクヨロジテムにキャリア入社。

 事業成長を促進する人事戦略や風土改革に注力するため、戦略人事PJリーダーとして活動を開始。
2022年より経営戦略を担う現職。前職はコンサルタント。
※物流企業のHRM推進研究会 幹事

~対談者紹介~

實藤美来(さねとう みく)さん
東京大学 教育学部 4年

重度訪問介護従事者としての訪問介助や、脳性まひの生徒らの家庭教師として指導にあたる傍ら、障害をもつ方々にとって「自立生活」がどのような意味を持つのかについて、質的心理学的手法を用いた研究を行う。
 

 

~対談者紹介~

堀内基希(ほりうち もとき)さん
高崎経済大学 経済学部 経営学科

長寿企業研究、陽明学を用いた経営改革について、アート思考と東洋思想の類似性について研究を行う。

 

現場の働き手を主人公に

師走ですね。私ども(コクヨ株式会社)の品川オフィスも外観をピンクにライトアップをしておりまして、映えてるなあと年末を感じています。今回は11月、12月ぶんまとめて年末特大号としました。わたくしの大事な2人の友人をお招きして「物流業界の課題」をテーマに座談会を開催しましたので、その模様をお話しいたします。

冒頭にプロフィールを紹介していますが、2人は大学生です。弊社コクヨロジテムの採用活動を通じて出会い、結果的に弊社の内定を辞退されたのですが、友人として同じ社会の一員として今でも私たちと良い関係が続いています。

一般的には内定を辞退されたらそこでお付き合いは終了だと思いますが、個人的には、お付き合いするのに、内定者かどうか、自社の従業員かどうか、どんな業界に属しているか、年齢など、属性はどうでもいいと考えています。同じ課題感をもっていて、進みたい方向性が共通であれば、その時々に適宜ご一緒する、そうすることによって新たなフィールドが広がることもありますし、解決できることも増えるかもしれないと思うのです。

では早速そんな友人たちとの座談会のお話です。


山本:「物流業界の課題」をテーマにさせてもらいましたが、お二人はどう捉えて、どう考えていますか?

堀内:現場で働く人が主人公になっていない気がする。様々な技術が発達してくる中で、ハード面は充実するが、ソフト面に課題が残ると感じます。

山本:「主人公に」とはキャッチに始めてくれましたね(笑)。ソフトとは具体的にどのようなことを指しますか?

堀内:実は今回の座談会の話をもらって、ドライバーさんなど物流関係者にインタビューをしました。「自動化など会社や上のほうで技術が進んでいるのは感じるが、現場との捉え方の温度感にギャップがある」、というのが実際の現場の意見でした。労働環境なども底辺に位置している場合があり周りの理解も進んでいない、表層的には改善が進んでいるように見えるが、実際は改善に遅れがある、その根本的なところとしてはソフト面の遅れがあるからなのでは、と考えました。

實藤:実際に今物流を担っているドライバーさんに寄り添うことが先なのではと私も思います。

山本:サプライチェーン上の最終ランナーでもある大事なポジションの現場の人に対して、寄り添いが不足しているのではないかということですね。

山本:他業界においても同じような課題はあると思いますか?

實藤:私は卒業研究で障碍者の自立支援団体にご協力いただいています。その事業所では、現場の実担当者の意見を吸い上げるために、小規模コミュニティを構成し、ミーティングを頻繁に開催するなど、意見を言いやすい風土づくりを行っている事例もあります。

山本:実務者、現場の声が届いてないという課題感のもと、そのような取り組みをしているということですね。

堀内:企業の経営改革が形式ばっていて、経営者の方針が現場にそっていない、にもかかわらず、経営者がそれを認識できず好転していると思っていることも多いのではないかと、思います。

山本:手厳しいですねえ(苦笑)

堀内:はじめのビジョンを大切にしないといけないと思います。

實藤:仕事内容の責任が多くなってきたりしてタスクに忙殺されているうちに、初心を思い出す機会が少なくなってきてしまうんでしょうね。

山本:現場の声のボトムアップとビジョンの本当の意味での共有が必要ですね。

山本:現場の人を主人公にということで、今度は社会との関わりという点ではどうですか?

實藤:働き方や待遇が改善されないなどの課題に対するボトルネックが、社会とサプライチェーンの接点である別のどこかにグレーゾーンとして存在していると感じます。わかっているけど目をつむりがちなこともあるはずです。

堀内:配送料無料だとかはNGです。無理なものは無理と言い切ることも必要です。極端な話、ドライバーという職種を公務員にするのもありかもしれないと思うくらいです。

山本:公務員にとは、斬新ですね(笑)。日本の商習慣含め、いまだ克服できていないことはたしかにありますね。物流業界の負担分を消費者が利益として受け取っている部分についてはどう思いますか?

堀内:消費者に負担として求めるのは厳しいとも思います。

實藤:消費者にとって配送料は安いほうがよいですが、プロセスにお金を払うように消費行動が変わってきています。物流もドライバーの働き方への課金という考え方が生まれるとおもしろいかもしれません。

山本:プロセスをどのように消費者に伝えますか?

實藤:サプライチェーンの中でどのくらいの人が動いているか、二酸化炭素がどれだけ消費されているのかなどが見える化されると、プロセスに価値を見出しやすいかもしれません。

堀内:災害等でモノが届かないことを経験したことがある人は物流の大切さがわかったとよく聞きます。消費者が倉庫に受け取りに来るということを体験にしてみるようなサービスも、物流業界に触れられてよいかもしれません。

實藤:受け取りに来てくれたらカロリー消費できる、など物流以外とタッグを組むのも面白い。お金以外で訴求できたほうが良いと思います。


といった感じで、わたくしはもはやこの場にいなくてもよいのではと思うくらい、議論はどんどん盛り上がっていきます。つづきは次回以降に持ち越します。

そして、ここであえて少し極端な言い方をしますが、SDGsの1つの視点でみても、働き手の貧困を生んでしまうリスクをはらんでいるのが私たち物流業界の現実です。特に運送業の中小企業では顕著ですが、ドライバーさんたちの労働時間や賃金水準はステークホルダーの中で劣位に置かれたままです。

今回の座談会の彼らのように、物流業界を外から眺めた時に、このように切実な課題感を持ち、考察につなげている人は少なからず存在します。


企業や働く人それぞれに、捉え方は様々ですし、様々なご意見があるとも思います。年末に悲観的に終わろうとしているわけではなく、こんな風に様々な意見をシェアしながら、業界として社会として課題認識とその解決につなげていきたいと考えています。

そんなお話の続きをもう少しこの座談会の話もしながら次回新年以降のコラムにさせていただきます。どうぞお楽しみに。