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2024年問題と多様性

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No.2(2022/07/20掲載)

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執筆者紹介

株式会社コクヨロジテム 企画推進室長 戦略人事プロジェクトリーダー 山本 紗代美

2019年に株式会社コクヨロジテムにキャリア入社。
事業成長を促進する人事戦略や風土改革に注力するため、戦略人事PJリーダーとして活動を開始。2022年より経営戦略を担う。前職はコンサルタント。
※物流企業のHRM推進研究会 幹事

対談者紹介

アサヒロジスティクス株式会社 人財本部 採用育成グループ 育成担当マネジャー 井上 健

1999年にドライバーとして入社(大手飲料メーカー様の自動販売機オペレーター業務)。営業所長を経て、2014年に人財育成担当に就任。
企業内大学(アサヒ人財育成大学)を運営。就任当時の1クラス運営を、現在では4クラスの階層別教育にまで発展させた。新入社員研修、フォローアップ研修(1年目~5年目)、中途採用社員研修、公募社員研修、新任拠点長研修、その他研修で3,500回以上の登壇。その他、企業主導型保育事業 助成金申請を担当。また、2015年~2018年の4期に渡り、中期経営計画発表会プロジェクトリーダーを務める。

2024年問題と多様性

今回のコラムはゲストとして、同じく物流企業のHRM推進研究会で幹事を務めている、アサヒロジスティクス井上様をお迎えして「2024年問題と多様性」というテーマで対談をさせていただきましたので、その内容をおとどけいたします。



山本 井上さん、ようこそ。今回は対談のオファーをお受けいただき、ありがとうございます。

(井上)
急なお誘いで少し驚きましたが、私で役にたつことであればと。

山本 きっとそう言って快諾してくださるだろうと、思ってました。
井上さんとのご縁ができたのは、JILSの「物流業のHRM推進研究会」の活動の中で、アサヒロジスティクスさんの研修施設にお邪魔したときでしたね。こんな(コロナ禍)ご時勢もあいまって、リアルにお目にかかるのは2度目ですが、勝手に親しみを感じていまして。

井上 実は私もですよ(笑)。山本さんの言動の端々でポジティブな空気を感じていました。

山本 同じように感じてくださり、嬉しいです。個人的には、自分に関わっていただく様々な方々、ひいては物流業界においても、皆さんにハピネスを感じていただけるように、自分ができることは何かなと、ついつい考えちゃうんですが、井上さんからも同じニオイがします(笑)。

山本 いつまででも楽しい雑談をしてしまいそうなので、そろそろテーマに入っていきますね。アサヒロジスティクスさんは、自社でたくさんのトラックをもって事業をされていらっしゃいますし、2024年問題は大きな課題なのでは?

井上 そうですね、切実です。その対策としてできることは改善を進めています。労働時間を把握し基準を満たすことは当然ですし、直接的ではないですが、倉庫の中の効率化もつきつめてやっています。その他、ドライバーにとっては、働く時間が減っても賃金が減らないようにして意欲の低下を防いだり、もちろんドライバーの労働時間コントロールぶんで上がる人件費を荷主様に負担いただくことも極力しないように自助努力をしています。それらをやり切って2024年問題としての求められる労働時間の規制をクリアしたとしても、やっぱりそこにはドライバー不足という問題がまだあるわけです。

山本 そうですよね、2024年問題ということだけが特筆されがちですが、その向こうにはもっと大きな社会課題としてドライバー不足がありますよね。ドライバー不足に対してはどのような対策をされているのですか?

井上 自社で積極採用しています。採用コストも前期以上に予算をとっていますし、様々な取組みを進めているところです。昨年度9月~3月末でドライバー積極採用を行い、目標採用人数300人、結果として約200人の方に入社いただきました。ただ、純増ではまだまだな部分がありますので、今期も積極採用は継続しているところです。目標値としては純増約160名ですので、更なる取組みが必要です。

山本 すごいですね。多くの企業さんがドライバーさんの採用に苦戦されている中、アサヒロジスティクスさんは善戦しているようにお見受けしています。秘訣はありますか?

井上 秘訣というわけではなく、主戦場を自分たちであえて変えています。限られたパイ(経験者)を他社さんと奪い合うのは不毛ですから、未経験の方もどんどん採用しています。女性ドライバーも増えてきていますよ。業界の女性ドライバー割合が2.5%ですが、当社の割合は6.15%となり、少しずつではありますが、女性ドライバーの入社も増えています。

山本 いまだに男性の比率が高い物流業界において、女性ドライバーを増やそうされているのもアサヒロジスティクスさんの特徴ですよね。一般的には、未経験歓迎とどんなに言っても実質が伴わず、環境面や価値観のギャップという問題を感じさせて離職を生んでしまっているケースは多くあると思います。何か工夫をされていますか?

井上 私たちは、女性であってもそうでなくても、新しく入社される方には一律にきちんと活躍いただけるように研修をしています。その研修の期間と場自体が同期という人間関係づくりにもなっています。配属後もその関係性は継続し、情報交換したり、お互いに励まし合ったり、それも頑張れる理由の1つだと思います。もちろん女性特有の働きやすさの追求は必要だと考えますので、女性ドライバー専用のトラックもオリジナル開発しています。

山本 それもすごいですよね。先日、研修施設にうかがった際に女性ドライバー用トラックを拝見しましたが、小物を収納できるスペースがあったり、着替えや休憩が外から見えにくい配慮がしてあったり、女性のフィジカルサイズに配慮したつくりになっていたり。実際に女性ドライバーが増えてみていかがですか?

井上 清潔な労働環境を求めること、細やかな気配り、コミュニケーションスタイルなど、女性という理由だけではないと考えていますが、新しい価値観の方々の働きが、既存の多くの社員にもお客様にも良い刺激にはなっているように感じています。

山本 自社にとって新たな属性の人、どんな人にとっても働きやすい環境を追求することについて考えさせられました。


対談はまだまだ続きますので、今回はアサヒロジスティクスさんの取り組みの中でも、女性ドライバーの活躍という点にしぼらせていただき、ご紹介しました。

「2024年問題と多様性」というテーマでと始めましたが、厳密には労働力不足と多様性が適切かもしれません。前回のコラムで書かせていただいたデモグラフィー型ダイバーシティ、つまり属性としての多様性ということだけからしても、物流業界はなかなか進んでいない現実があります。

一方で、労働力不足は深刻でこれまでとは違う労働者市場から労働力を獲得する必要にも迫られているのではないでしょうか。これまでとは異なる多様な属性の人材を獲得するためにも、獲得した人材に定着してもらうためにも、自社が魅力的であるかどうかが問われます。皆様の会社、組織はいかがですか?

次回はそんなお話の続きと、アサヒロジスティクスさんとの対談の続きにいたします。

>>次回 コラム対談「労働力不足に効く?!自社の魅力」


【解説】
2024年問題とは
働き方の改善や魅力的な職場づくりを目指して成立した2018年働き方関連法、その中で「時間外労働の上限規制」が設けられ全産業において適用されているが、自動車運転業務については、適用に猶予期間が設けられており、その施行が2024年である。
物流業界においては、自動車運転業務、主にトラックドライバーの時間外労働の上限規制(年960時間)に伴って発生する問題のことを2024年問題という。