受講のおすすめ

ストラテジックSCMコース 講師代表
東京科学大学名誉教授 圓川隆夫

植物の栽培、動物の家畜化にはじまる人類の進歩に寄与した24の大発明GPT(汎用技術) の一つに、日本生まれのリーン生産方式(Lean)が挙げられています(Lipsey at al.)。これはJIT(Just In Time)と言い換えてもよく、1990年代にSCMを誕生させる契機を与えたもので、当初日本のSCMは世界をリードしていたと言えます。ところがSCMが定着してきた2008年にはじまるSCMの世界ランキングSupply Chain Top 25(Gartner社が毎年発表)では、今日に至るまで日本企業がランクインしていませんでした。それはなぜでしょうか? 

今でも日本企業はアナログの世界での現場の見える化や改善力は強いと思われますが、海外ライバル企業はリーンを十分学んだ上で、“モノ”から“コト”へのビジネス戦略転換のもとIT投資と標準化に代表される活用法の強化、すなわちDX(デジタル・トランスフォーメーション)によるサプライチェーン全体の見える化やそれに基づく顧客価値創造により、一気に勝者になる傾向がありました。これは日本全体でのデジタル敗戦にもつながるものです。VUCA時代のSCMには戦術・手法とともに、顧客やパートナーとの連携のためのDXに基づくシステム化・自動化力が不可欠でした。

17年、34期目をむかえる本講座は、2010年に旧東京工業大学(現 東京科学大学)を中心に集まったSCMの第一線で活躍されている企業の方々や教育研究者の日本劣勢の認識・議論から立ち上げられ、JILSへ移管後も取り巻く環境変化に対応して常に内容をブラッシュアップ゚させて参りました。今日まで広く業種や専門の枠を越えた850名以上の修了生を送り出し、その同窓生のネットワーク、SSFJ (Strategic Supply Chain Management Forum Japan) も世界に広がっています。この輪自体もコロナ禍で一時停滞しましたが、本講座の価値を構成する揺るぎない財産です。

コロナ禍終息の一方で、SCMの意味合いもSustainability推進の高まり、特にササプライチェーンレベルでのESG(Environment, Society, Governance)のパフォーマンスが重視されるようになってきました。さらに米中摩擦やウクライナ侵攻に伴うサプライチェーンの混乱や資源高騰からJITの見直し、トランプ関税やベネゼエラ、イラン攻撃による経済安全保障の重要性が高まる等、更なるSCMのパラダイムの変化が進行しています。リスク対応力やレジリエンスを高めるだけでなく、それを超えて成長・進化する反脆弱性(Antifragility)なる新たな概念も登場しています。

一方、国内の物流の世界では2024年問題対応を契機に、2026年4月から一定規模以上の荷主に、物流効率化に向けた積載効率の向上、荷待ち・荷役時間の短縮等の責任を負う物流統括管理者を配置することが法律で義務付けられました。これはこれからの競争力の源泉として物流サイドからのサプライチェーン全体最適化も担える人材(CLO)育成を期待するものでもあると考えられます。

そして今、高市内閣が謳う「強い経済」に向けてイノベーションサイクルを、失われた30年から反転・上昇に転じさせる動きが始動しています。幸い苦手なITリテラシー不要の生成AIや、日本が得意なフィジカルAIの活用が急激に始動し、経済再生にリープフロッグが起こる兆しが見えてきました。その一つのエビデンスとして、冒頭で述べたGartnerのSupply Chain Top 25 for 2026の12位に、日本企業として初めてトヨタが一気にランクインしたことが挙げられます。これは地政学的リスクを加味したジャストインケースや地産地消の実践、サプライヤーや物流事業者・顧客まで含めた見える化を越えたエコシステムでのオーケストレーション(協働)が評価されたものと思われます。

SCMの基礎に加えてこのような最新の動きを学ぶとともに、本講座では、講義に加えて、リーンやJITの現場の改善で用いられた“なぜなぜ分析”の進化版であるCRT (Current Reality Tree:発明・発見を促す推論、アブダクション手法)を使った“SCMを阻害する中核問題”とその解決策を探るグループ討論とその発表を、課しています。これは大変ハードな課題ですが、過去33回の講座での実施で、SCMの本質や問題の奥深い理解、業種の違いを超えたメンバー間の情報共有や相互理解に役立ったと、大変好評を博しています。                        

講師陣と一丸となって、上昇基調経済に向けたSCM力を磨き身に付けようではありませんか。

このような方に受講をお勧めします

極めて戦略的であり、かつ経営的な重要性をもつSCMの構築や改革は、経営的な視点、言い換えれば総合的、鳥瞰的な視点をもって、全社的な立場から推進されなければなりません。そのためには経営トップの積極的理解と優れたプロジェクトリーダーの存在が不可欠です。また、情報システムのリーダーがSCMについて理解し、システム構築がされることも重要な要素です。

このような観点から、このコースは経営幹部や、特に経営企画部門のスタッフの方々と共に、全社的な情報システムの企画・構築に当たられる方々にも受講していただきたいと考えています。

また、すでに企業等において、サプライチェーンに関する業務の経験を持ち、解決すべき課題や問題意識を持っている経営者や中堅幹部社員の方々、システム部門の方々に参加いただいて、専門的な知識の習得と実務に即した能力を身につけていただきたいと考えています。

過去の受講者の所属部門(一部)

・外資系メディカルメーカーSCM部門
・電機メーカー生産管理部
・ゼネコン国際プロジェクトチーム
・食品業SCM推進グループ
・商事会社物流企画部
・商社系ロジスティクス企業
・コンサル会社事業開発コンサルティング部門
・物流ソフトウェアベンダー開発部
・化学メーカー戦略サプライチェーン部
・流通業SCM本部
・国際物流業経営企画部門

受講者の感想(一部)

●「SCMを志す仲間 メーカー、物流業、コンサルタント、など、さまざまな職種の方と、多様な問題意識をぶつけ合うことができた。」
  物流業ネットワークデザイナー

●「全体のプロセスを見て問題を認識することが、解決策を生み出し、企業の成功へ導くスタート地点だということを、グループ課題演習での議論を通して学びました。」
  外資系製造業SCMマネージャー

●「SCMに関心を持つ講師、グループメンバー、クラスメンバーと交流でき、コース終了後も繋がるきっかけを作れたことは最大の収穫です。」
  メディカル企業SCM部門

●「ORの考え方など、文系の自分にはなじみのなかった分野を知ることができ、積極的に習得したい考え方が見つかった。」
  コンサルティング会社SCMコンサルタント