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船井総研ロジ株式会社は「日本最大級の物流コンサルティングファーム」として、荷主企業と物流企業の双方に対して、第三者的立場からお客様の課題解決をサポートしているソリューションプロバイダーです。お客様が抱える課題や、それらに対するソリューション、今後の課題などについて、田代三紀子氏(執行役員 コンサルティング本部 副本部長)にお話を伺いました。
船井総研ロジ株式会社 『物流業界の生成発展と地位向上』を経営目的として2000年に設立。荷主企業と物流企業の双方を支援するという第三者的立場から、コンサルティング、コミュニティ、ネットワーク、データベースを4軸に、お客様が必要とするソリューションをワンストップで提供している。
執行役員 コンサルティング本部 副本部長 田代 三紀子 氏 2015年4月入社。ロジスティクスコンサルティング部グループマネージャー、ESGロジスティクスコンサルティング室室長などを経て、2024年3月に執行役員、同4月より現職。
≫船井総研ロジ ホームページ
――御社の特徴についてご紹介いただけますか。
弊社は物流分野に特化したコンサルティングを行っている会社です。主なお客様は、物流サービスを提供する側の運送会社や倉庫会社などの物流企業と、製造業や小売業、卸売業など物流サービスを利用する側の荷主企業で、その双方に対してコンサルティングを行っているのが大きな特徴といえます。
日々の業務を通じて、業界全体がどのような状況になっているのか、各企業がどのような取り組みを行っているのかなど、多彩な情報が弊社の中に蓄積されています。それらを適切に活用しながら幅広いお客様に対して有益なコンサルティングを提供できる点も特徴といえるでしょう。
私は日頃、荷主企業向けのコンサルティングを担当しておりますので、本日は主に荷主企業向けコンサルティングの内容や事例を中心にお話しいたします。
――最近、お客様から寄せられるご相談にはどのようなものが多いのでしょうか。
課題解決のための具体的なコンサルティングのご相談ももちろんありますが、それ以前の段階として「今、他社はどういった状況なのか?」というお問い合わせが多くなっている印象です。「自社なりに様々な対策を実行してきたつもりだが、本当にこれで十分か」「取引相手である物流企業はどのように感じているのか」などを意識されているお客様が多いですね。
物流関連2法の改正では、荷主企業に義務なども生じてきますので、「追加で対応しなければいけないことはあるか」といったご相談も増えています。法の定める範囲や判断基準など、具体的な事柄はこれから順次決まっていく予定です。そのため、自社の規模から考えて特定事業者※の対象企業になるという想定のもと、今のうちから準備を始めているお客様もいれば、そうした点が明確になってから動こうと様子見しているお客様もいて、対応が分かれています。
※物流関連2法に関して、取り扱い物量の規模に応じて「特定事業者」が定められる。特定事業者に該当する企業は、中期経営計画の策定、物流統括管理者(CLO)の選任が義務づけられる
――法改正で荷主企業に選任が義務付けられた「物流統括管理者」についてはいかがでしょう。
やはり大きな関心を集めています。しかし、現状では法改正の中で「物流統括管理者」の定義が明確でないことに加え、従来からある「CLO」という言葉のイメージが混在して、求められる人物像が曖昧になっているようです。そのため、どのような人物を選任するべきか、物流部長がそのまま就任してよいものか、候補者が社内にいない場合は育成するのか外部から採用するのか、どういった業務を担ってもらうのかなど多数の課題があり、弊社にも「他社はどうしているのか知りたい」というご相談が多くなっていますね。
弊社では現在、想定される物流統括管理者の役割を「組織内で物流戦略およびサプライチェーン管理において最高責任者としてのリーダーシップを担当する立場」と考えています。つまり、物流部門に限らず、調達から生産、在庫管理、配送、販売、法務まで、サプライチェーン全体を最適化し、その効率性向上を実行・推進していく「旗振り役」です。社内の各部門を巻き込み、言うべきところはしっかり主張しながら計画を策定し、必要な投資を社内に提言して決裁を得られる方となると、役員クラスの権限を持った人物が適任と見ている企業も多いのではないでしょうか。
――お客様のお悩みに対して、御社ではどのようなソリューションを提供していますか。
個別のコンサルティング以外に、物流企業向けと荷主企業向けにそれぞれ研究会組織を立ち上げています。
物流企業向けの研究会は、全国各地から運送会社の経営者にご参加いただき、ドライバーの採用や新規顧客の開拓方法など、先行企業の様々な取り組み事例を中心とした情報交換を行いながら、企業の業績アップにつながる活動を行っています。多数の経営者とつながりを持ち、お互いに励まし合いながら学ぶことができるのもメリットの1つです。
もう一方の荷主企業向け研究会は今年からスタートしたのですが、特定の業種にこだわらず、製造業や小売業の物流責任者の方々にご参加いただき開催しています。荷主企業の物流担当役員や物流部長は、他社の物流事情について情報共有をする機会がほとんどありません。しかしこの研究会の場であれば、物流の2024年問題への対応はもちろん、例えば「トラックGメンの問い合わせは来ているか」のような細かな話まで、様々な情報を入手することができます。「自社は他社と比べて遅れているから、取り組みをもっと進めなければ」と危機感を持つなど、意識変革も促されます。
さらに、研究会で入手した内容を自社の活動へどう落とし込んでいくのか、各社で考えていただくなど、会員企業がレベルアップできるような場をご提供しています。こうした活動を増やすことで、コミュニティが広がるだけでなく、ここでの出会いをきっかけに他社との共同物流へつながるきっかけとなることも目指しています。
――お客様を課題解決に導くにあたって、大切にしていることは何ですか。
荷主企業の場合、「社内に対する啓蒙」がポイントになると考えています。課題解決が思うように進まない要因の1つに、社内の「認識のギャップ」があるからです。物流を任されている部門の方々は、物流業界に押し寄せている厳しい現実はもちろん、その対策に遅れや誤りがあると企業の存続が危うくなるかもしれないという意識をもっています。しかし、時として経営陣や、物流に直接関わってない製造、販売、調達などの部門の方々にはそれらが十分に伝わっておらず、対策の必要性を訴えても「それは物流部門の仕事だろう」「困ったことは何も起きていないじゃないか」などと言われ、なかなか協力が得られません。そこをどう上手く伝えて、会社全体の取り組みとして進めていくのか、皆さん苦労されているところです。その点、弊社研究会を通じて得られる「他社の先行事例」は、社内の各部門に対する説得材料の1つとしてご活用いただけます。
また、弊社ではその対策によってどのような影響が及ぶのか、想定される効果や課題など「良い点と悪い点」を含めてお伝えするようにしています。仮に悪い点であっても、会社全体で見ると良しとすべきケースもあるからです。そういった指摘は、社内の人間からはなかなかしにくいものですが、数多くの企業の物流を見てきた第三者の我々からお伝えすれば、説得力を持った形でスムーズに理解が広まります。そうして、お客様が実行したいこと、実現しなければいけないことが社内で承認を得られるように、それをサポートすることを大事にしています。
――今回「ロジスティクス強調月間2024」のサポーターに参画いただいた経緯をお聞かせください。
弊社はコンサルティング会社という立場だからこそ、物流業界全体の様々な情報が入ってきますし、物流企業や荷主企業など幅広い方々に向けて発信もしていけます。例えば法改正の話題など、読み解くのが難しいテーマも噛み砕いて分かりやすく発信していくことで、リスクを回避しつつ持続可能な企業活動につながる物流構築のお手伝いをしていきたい、という想いから参画させていただきました。
そしてもう1つ、物流の地位を向上させたいという想いもあります。物流は社会になくてはならないものであり、荷物が届くのは当たり前ではないという価値や重要性を改めて皆さんにお伝えしたいのです。そのうえで、それを維持していくために各社が何を行っていかなければいけないのか、様々なサポートを惜しまず、発信できたらと考えています。
――ロジスティクスの未来をどのように予測・想像されていますか。
今年は物流の2024年問題や物流関連2法の改正などあり、いろいろな意識が変わる良いタイミングだと考えています。しかし、それはまだ氷山の一角にしかすぎません。改善を進めていくためには、多くの人の考えや、当たり前とされてきたものを変えていかなければいけないでしょう。例えば、自動化やDXに取り組んでも、仕組みや業務に対する考え方を根底から変えていなかったために、結局、無駄な手作業が生じるなどのトラブルに至ってしまった事例も耳にしています。
「今までの当たり前を見直し、個別最適から全体最適へシフトしなければ、ロジスティクスは本当に寸断されてしまうかもしれない」ということを啓蒙し、自動化やDXによる効率化を進めることができれば、限られた人員でも上手く回るような仕組みを実現できるのではないでしょうか。
――今後に向けた目標をお聞かせください。
物流部門の責任者は、会社からのプレッシャーや行政からの通達などに対応しなければという意識はあるものの、一方で「何をしたら良いか分からない」という悩みもお持ちです。弊社の研究会で情報収集していただくのも解決策の1つですが、情報を手に入れて終わりではありません。様々な業種の企業が集まっていますので、弊社が旗振り役となり、会員企業の物流の効率化につながるような、荷主企業同士での共同配送の仕組みづくりなどを実現していけたらと考えています。活動の輪をさらに広げるべく、研究会のメンバーも随時募集中ですので、ぜひご参加ください。
(2024/10/25掲載)
本インタビューは機関誌「ロジスティクスシステム」2024年秋号(10/28発行)に掲載予定です。
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