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「ロジスティクス強調月間2024」サポーターからの提案―アセンド株式会社

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運送業の業務効率化と経営高度化をITで推進 荷主企業も巻き込み、変革をさらに加速する

アセンド株式会社は、運送業に特化したオールインワンSaaSサービス『ロジックス』を提供しているほか、専門的な知見からのコンサルティング業務なども手がける、2020年3月設立のスタートアップ企業です。お客様が抱える課題や、そのソリューションとなる『ロジックス』の特徴、業界全体の今後の課題などについて、日下 瑞貴氏(代表取締役社長)にお話を伺いました。

アセンド株式会社
2020年3月設立。「物流の真価を開き、あらゆる産業を支える。」をミッションに掲げ、豊富な業界知見とステークホルダーとの密接な関係性を武器に、運送業特化オールインワンSaaS『ロジックス』のほか、コンサルティングサービスも提供している。

代表取締役社長 日下 瑞貴 氏
早稲田大学政治学研究科(政治学専攻)修了。PwCコンサルティングにてSCMシステム関連、野村総合研究所にて物流業界の構造分析、DXプロジェクトなどに従事した後、2020年3月にアセンドを設立。物流関連の委員・講師を多数務めるなど、業界全体の改善・啓蒙にも携わる。

現場で実感した課題を根本から解決するため起業

――御社の特徴についてご紹介いただけますか。

私は以前、PwCコンサルティングや野村総合研究所で、サプライチェーンやロジスティクスのコンサルティングを担当していました。そこで実感したのが「物流はまさに地場産業であり、基幹産業である」ということです。「経済の血管」として全ての産業を支える現場を間近で見られることに、大きなやりがいを感じていました。一方で、業界特有の課題があることを多くの人が認識していながら、それらを解決する良いソリューションがないことにも気付いたのです。

そうした状況で、外部の立場から「改善・改革が必要です」と言い続けるだけでは業界全体の劇的な進展は難しいと感じ、効果的な解決策を自ら提供しようと2020年にアセンドを立ち上げました。現在は、運送業向けのクラウドサービスを提供しているほか、個別のご相談に対するコンサルティングも行っています。

――国内の物流にはどのような課題があると考えているでしょうか。

運送業はクラウドの利用率が全産業平均最下位と言われています。「デジタル化が最も遅れた産業」と言い換えてもよいかもしれません。現場には様々な種類の紙や帳票があり、電話での受注内容をメモに書き、それを受注簿に書き写し、配車表へ書き込み、運行の変更があれば書き直し、運賃や料金を集計し、請求書を起こし…と全てがアナログ業務のため、時間的なコストが非常に高くなっていました。この業務をITの力によってできるだけ簡素化し、無駄を削減する必要があります。

ただ、本質的な課題はもう一歩先にあると考えています。それは、運送業の価値を高めるための「経営管理の高度化」です。運送業経営は、トラックを購入・リースする、ドライバーを雇用する、倉庫を借りてマテハン機器を導入するなど、固定費の比率が非常に高くなりがちです。一方、サービスの提供内容では差別化がしにくいという傾向があります。基本的な勝ち筋は、固定資産の稼働状況や収益性などを日々モニタリングし、薄い利ざやを積み重ねながら事業規模を拡大していくことなのですが、業績に関する様々なデータを正確に把握できていない状況では、経営改善にとって極めて重要となる「管理会計」も思うように実施できません。この点もITで解決できると考えています。

――それらの課題に対してどのようなソリューションを提供しているのでしょうか。

運送業特有の大量のアナログ作業に対しては、業務を効率化するオールインワンのクラウドサービス『ロジックス』を提供しています。受注、配車、帳票、点検・整備、請求、労務など、多様な管理機能を備えており、これ一つで様々な業務を簡単に管理することができます。また、日次や月次のダッシュボード、解析レポートなどの機能もあり、それらを簡単に把握できるのも利点です。蓄積されたデータを指針にすれば、取引先との運賃交渉や取引を継続すべきかの判断など、「経営管理の高度化」による経営改善にもお役立ていただけます。

運送業は、ラストワンマイルを担う会社、地場の配送を担う会社、長距離の幹線輸送を担う会社と、様々な距離別の形態があります。荷物も農産品、日用品、建築資材など様々で、非常にセグメントが広い業種です。そこに対応できる「広さ」を持っていることが『ロジックス』の強みといえます。また、月に一度だけしか使われないシステムではなく、日々の業務で頻繁に使用できるよう、請求書の発行フローは問題ないか、帳票が正しく出るかなど、日常業務の使用に耐えるだけの「深さ」を持っていることも強みです。幸い当社はスタッフにも恵まれ、充実した機能を持つシステムを高速で開発していけるのも強みといえるでしょう。

現在、おかげさまで導入企業数は前年度比800%増と急成長しています。当初は車両数が100台未満のお客様が多かったのですが、最近は数百台、数千台規模のお客様や、上場されているお客様も増えてきました。企業規模の大小に関わらず、どんなお客様にもご使用いただけるのも特徴といえます。

蓄積されたデータを説得材料に変えて、成功まで伴走

――お客様への導入提案にあたって、大切にしていることは何ですか。

最も大切にしているのは「カスタマーサクセス」です。システムの導入はあくまでも手段であり、それ自体が目的ではありません。システムを正しく使っていただけるよう伴走支援することで、お客様の課題がしっかり解決され、成功へつながるよう意識しています。特に、小規模のお客様では導入担当者がいないため、「自分たちでシステムを使いこなせるのか」とご不安でしょうから、丁寧なフォローが欠かせません。システム提供開始以来、1社も解約がないのは、こうした取り組みの成果だと自負しています。

――コンサルティングではどういったご相談が多いのでしょうか。

運送会社の方々にとって、『ロジックス』導入によって可視化された経営状況から何かしらの気付きを得て、具体的な改善案を策定して実行していくのは、決して簡単なことではありません。そうした際に、専門的な知見を持った当社のコンサルティングチームが「何をどのように変えていくべきか」をご提案し、サポートしています。

特に多いご相談は、やはり荷主企業に対する運賃交渉の支援です。これに関しては、業界の状況や運賃の相場、自社の利益構造などを挙げながら、各種運賃をいくら引き上げる必要があるのかを示すなど、かなり具体的な資料作りを全面的にお手伝いしています。『ロジックス』から得られたデータをもとにしているため、説得力のある資料として交渉に活用いただけるのがポイントです。交渉結果は相手次第の面もありますが、実際に収支を変え得るところまで準備できるのは大きなメリットといえるでしょう。

他にも、人事制度の改善提案では、採用方針から等級・評価・報酬の各制度の設計まで、こちらもかなり具体的なお手伝いをしています。また、『ロジックス』導入前のお客様はDX戦略のご相談が多いため、「なぜそのシステムが必要なのか」「何を実現したいのか」を明確にするところからサポートしています。

――今回「ロジスティクス強調月間2024」のサポーターに参画いただいた経緯をお聞かせください。

私自身、例えば運輸デジタルビジネス協議会の理事や、国会議員向けに政策提言を行う勉強会の担当など、物流業界全体の改善に向けた様々な活動に携わっています。中でも、日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILS)とは、2019年に日米のロジスティクス比較調査をお手伝いしたのを皮切りに、人材育成セミナーの講師、『ロジスティクスコンセプト2030』発刊の事務局担当、「ロジスティクスイノベーション推進委員会」の委員など、様々な形で協働してきました。これは、JILSには国内の主要な荷主企業が入会されているので、ここを通じて荷主側の意識改革を実現できれば、業界全体に極めて大きな影響をもたらすことができると考えているからです。

法改正も含め、ここからの2年ほどはサプライチェーンや産業構造自体をもう一段階アップデートするチャンスではないかという期待もあり、参画させていただきました。

運送会社同士に加え荷主も連携変革を推し進める

――ロジスティクスの未来をどのように予測・想像されていますか。

起業からの4年間で、運送業の現場は着実に変化してきたと考えています。以前は「カタカナ言葉は使わないで」と随分言われたものですが、今では、地方の車両10台規模のお客様からも「うちもDXしたい」とご相談をいただくようになりました。だから、ロジスティクスの未来は「明るくなる」と信じています。

大事なのは、変化を成し遂げた会社が「勝つ」こと。結果をしっかり出すことで、「やっても意味がない」と言っていた人たちも意識が変わるはずです。幸い行政もそうした動きを後押ししていますから、この波に乗り、さらに大きな波へと押し上げたいですね。それを実現できるかどうかは、当社をはじめとした物流業界に関わる全ての人の行動次第でしょう。

――今後に向けた目標をお聞かせください。

物流の重要性に対する想いを改めて伝えていくために、今年8月にコーポレートミッションを「物流の真価を開き、あらゆる産業を支える。」へと刷新しました。「真価をつくる」ではなく「真価を開く」としたのは、元々あった価値を開いていくことで、物流業界だけでなく全産業を支えることにつながると考えたからです。その実現に向けて、直近では大きく二つのテーマを設定しています。

一つは、運送会社のデジタル化をさらに推進し、データを活用して運送業の経営レベルを上げていくことです。そのためにも『ロジックス』を全国の運送会社へ さらに普及させたいと考えています。既に、ご要望の多い「協力会社間の連携機能」の開発を進めており、まもなく稼働する予定です。運送会社同士で協力して荷物を運ぶ機会は多いですし、これこそクラウドサービスだから可能な解決策と言えますから、バージョンアップの大きな目玉の一つになると考えています。

そしてもう一つは、荷主企業の意識改革の支援です。荷主企業でも、自社配送をしているところもあれば、運送会社に依頼するものの配送計画は自社で作成するというところもあります。物流関連2法の改正などもあり、今後は荷主企業が責任を問われる時代になっていきますから、自分たちの荷物がどの会社で運ばれているのか、積載率はどうかなどを自ら把握・管理する必要が出てくるでしょう。2026年4月から荷主企業に「物流統括管理者」の設置も義務付けられる予定ですが、この方々を中心に、『ロジックス』で蓄積したノウハウや業界知見を活用し、製品の提供やコンサルティングを通じて様々な支援を行っていきたいと考えています。

(2024/10/15掲載)

本インタビューは機関誌「ロジスティクスシステム」2024年秋号(10/28発行)に掲載予定です。

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