物流をコストから花形産業へ。テクノロジーと「つながり」が創る物流の未来
物流業界が直面する「2024年問題」をはじめ、慢性的な人手不足や現場の過重労働など、課題は山積しています。そうした中、「過酷な労働から人々を解放し、人類が創造性、技術革新、そして世界をより良くする活動に集中できる世界を実現する。」というミッションを掲げ、最先端の独自フィジカルAIとデジタルツイン技術で物流現場の変革に挑んでいるのが株式会社Mujinです。
2024年には新たに「株式会社Mujin Japan」を設立し、より現場に寄り添ったエンジニアリング体制を構築しました。今回は、同社CEOの荒瀬勇氏に、物流現場への思い、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)会員としての活動やその価値、そして日本の物流が目指すべき未来像について伺いました。
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株式会社Mujin
Mujin Japan 取締役CEO 荒瀬 勇
- 業種
- ソフトウェア
- 入会
- 2018年入会
※所属・役職は取材当時のものです。
株式会社Mujin
「過酷な労働から人々を解放し、人類が創造性、技術革新、そして世界をより良くする活動に集中できる世界を実現する。」をミッションに掲げ、独自の統合オートメーションプラットフォーム「MujinOS」を用いた自動化ソリューションを提供。「株式会社Mujin Japan」と伴にソフトウェア技術にとどまらず、自動化の基礎となる現場の現状把握、要件定義、構想検討から工事、インテグレーション、アフターサポートまでトータルで物流・製造現場の課題解決を支援している。

物流は社会の「血液」。現場のしんどい仕事をなくすための進化
──本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。オフィスにお伺いしてまず驚いたのが、エントランスにある大きなロボットでした。Mujinならではの迫力ですね。
ありがとうございます。弊社はロボットそのもののハードウェアを作っているわけではないのですが、Mujinのソフトウェアやシステムを使うことで、実際にロボットがどのような動きをし、何ができるのかをまずは視覚的にご覧いただきたいと思い、展示しています。
──まずは、荒瀬様ご自身の物流現場に対する思いと、Mujinの「過酷な労働から人々を解放し、人類が創造性、技術革新、そして世界をより良くする活動に集中できる世界を実現する。」というミッションがどのように重なったのか教えていただけますか?
私にとって物流とは、社会における「血液」のようなものです。どの業界や企業にも欠かせず、製造業・小売業・卸などあらゆる分野を支えています。さまざまな業界の根幹を知ることができる点も、物流の面白さだと感じています。
一方で、物流の現場には重い荷物を運ぶなど、いわゆる「3K」と呼ばれる大変な仕事も多く、人が集まりにくい環境でも、物流を止めることはできません。そうした中で、Mujinのミッションや「すべての人に産業用ロボットを」というスローガンは、私の物流に対する思いと強く重なりました。
──2024年には「Mujin Japan」を設立されました。トップとして牽引される中で、日本の顧客に対する現場力やエンジニアリングの提供体制はどのように変わりましたか?
一番大きく変わったのは、「建設業許可(機械器具設置工事業)」を取得したことです。
これまでのMujinはソフトウェア会社としての側面が強く、工事の機能を持っていませんでした。そのため、お客様が「早くロボットを入れたい」と思っても、設備の設置工事はお客様ご自身や他社様にお願いする必要がありました。
そこでMujin Japanでは建設業許可を取得し、ソフトウェアの提供からご提案したソリューションの工事、立ち上げまでを一貫して担う「ターンキービジネス」の体制を構築しました。
営業から導入後の保守・アフターサポートまでトータルでお客様に寄り添えるエンジニアリング集団へと進化した点が、最大の強みです。

展示会やアワードで実感する、現場の生の声と「繋がり」の価値
──ソフトウェアからハードの設置まで一貫して任せられるのは、お客様にとって非常に心強いですね。続いて、JILSの活動について伺います。これまでの活動の中で、特に印象に残っている繋がりや出会いはありましたか?
やはり「国際物流総合展」です。日本最大級の展示会であり、私たちにとっても特に力を入れている場です。展示会にはしっかり投資しています。
日本のお客様は、実際に動いているものを見て初めて信頼してくださることが多いため、展示会ではロボットを会期中ずっと稼働させ、「自分の現場でも使える」とリアルにイメージしていただけるようにしています。
裏方はなかなか大変なのですが、物流現場は24時間365日止まらないもの。だからこそ、展示会でも止めないことにこだわっています。また、共同出展などを通じて他社様とのつながりが深まるのも、大きな魅力だと感じています。
──JILSには荷主企業から物流企業、テック企業まで多様な企業が集まります。技術提供側として、ユーザーの「生の声」や統計データに触れることは、製品開発にどう影響していますか?
非常に大きな影響があります。JILSさんが毎年公開されている統計情報は、自動化ニーズの変化や人材不足の状況を数値で把握できるため、投資対効果の検討や戦略立案の際に大変参考になります。
また、講演会や会員同士の交流を通じて、「現場で今どんな課題があるのか」「どのように乗り越えたのか」といった生の声を聞ける点も大きな価値です。ユーザー企業様の課題を正確に把握してこそ、私たちも価値ある提案ができます。そうしたお困り事を吸い上げられるJILSさんのようなプラットフォームは、私たちにとって欠かせない存在だと感じています。
──MujinはJILSが主催する「ロジスティクス大賞」を過去3度(2018年、2021年、2023年)受賞されています。この賞への挑戦や外部からの評価は、社内にどのような効果をもたらしましたか?
社内全体のモチベーションや一体感は確実に高まります。私たちが昼夜を問わず作り上げてきたものが、物流の最前線を知るJILSさんに評価されたことは何よりの喜びです。
また、大賞への応募プロセス自体にも大きな価値があります。自分たちのシステムの「本当の価値」を言語化し、社内で共有できる良い機会になるからです。賞を賜る事でより営業はさらに自信を持って提案でき、開発側もお客様のニーズをより正確に捉えられるようになります。
ちなみに2018年頃は、物流業界でMujinの認知度はまだ高くありませんでした。しかし、大賞をいただいたこともきっかけとなって、一気に認知が広がる大きなターニングポイントとなりました。

物流をコストから「花形産業」へ。日本発の最強モデルを共創する
──学生向けのロジスティクス研究発表会にもご協力いただきました。これからの物流業界を担う学生へ、どのような期待を寄せていますか?
学生の皆さんには、「物流はただのコストセンターではなく、利益を生み出すプロフィットセンターであり、花形産業だ」ということを伝えたいです。
これまで物流は、物を作って売るための裏方の仕事と捉えられがちでした。しかし、海外のAmazonやアリババの事例からも分かるように、今はサプライチェーンや物流を制した企業が競争を勝ち抜く時代です。効率よく物を届けるネットワークを構築できれば、それ自体が大きな付加価値になります。
現在、物流業界は人材不足と言われていますが、裏を返せば今こそ大きく活躍できるチャンスでもあります。5年後、10年後にはさらに注目される分野になるはずです。物流に興味や熱意を持った学生が育ち、日本から世界で戦える企業が生まれていくことを期待しています。
──JILSへの入会を検討している企業へ、会員として得られる価値を「一言」で伝えるとしたら何でしょうか?
一言で言うなら、やはり「繋がり」です。Mujinという会社がJILSさんに所属していること自体が、「私達も物流の社会課題を一緒に解決していくのだ」という意思表示だと思っています。
業界が違っても、今の物流現場が何に苦しんでいて、どのような技術が求められているのかを知ることは、どんなビジネスにも必ず参考になります。今、生成AIを使わなければ時代に遅れてしまうように、物流の最新のリアルな情報を仕入れておくことは、今後のビジネスにおいて極めて重要です。新鮮な生の声を聞き、自社のビジネスに繋げる場として、非常に価値があると思います。
──最後に、今後の展望をお聞かせください。日本の物流をどのように変革していきたいとお考えですか?
「日本の物流は強くて素晴らしい」と、世界に胸を張って言えるようにしたいですね。日本の現場の作業品質や丁寧さは世界トップレベルですが、サプライチェーン全体を俯瞰した仕組みづくりや全体最適化には、まだ伸びしろがあると感じています。
日本の強みである「現場の細やかな改善力」と、私たちが提供する「最先端のテクノロジー」を融合させれば、これまでにない強い物流モデルが生まれるはずです。そのためには、技術を提供する側と現場を担う側が歩み寄り、汗をかきながら未来のスタンダードを共に作っていくことが大切だと考えています。
Mujinはこれからも、お客様とともに物流業界の変革に挑み続けていきます。

まとめ
物流業界が抱える慢性的な人不足や過重労働といった課題に対し、最先端の知能ロボット技術だけでなく、建設業許可の取得による一貫したエンジニアリング体制で向き合うMujin。荒瀬氏の言葉からは、物流を単なるコストセンターではなく、利益を生み出す「花形産業」へと変革し、日本から世界で戦える物流モデルを築いていく強い意志が感じられました。
技術を提供する企業と現場を担うユーザー企業が歩み寄り、共に汗をかきながら未来のスタンダードをつくっていく。その中で、業界の垣根を越えた情報交換や協業を促すプラットフォームとして、JILSのネットワークを今後ますます活用していただきたいと思います。
※取材は2026年2月27日に行われました。