資格取得者の声

部分最適から全体最適へ意識を転換 競争力に直結する本質的な課題に挑む

当協会の「物流技術管理士資格認定講座」を5年前に受講したヤマハ株式会社の中川雅仁氏に、講座の内容や受講のメリット、その後のキャリアへの活用方法などについてお話を伺いました。

ヤマハ株式会社
業務本部 企画管理部 部長 中川 雅仁 氏

物流技術管理士資格認定講座

第144期(2021年5月~10月)受講受講

ヤマハ株式会社 業務本部 企画管理部 部長 中川 雅仁 氏

※所属・役職は取材当時のものです。

ヤマハ株式会社

1887年創業。ピアノ、電子ピアノ、エレクトーン、管楽器、ギターなどの楽器をはじめ、ホームオーディオや業務用音響機器などの音響関連製品、音楽教室事業のほか、楽器の製造・販売を通じて培った技術・ノウハウを生かした部品・装置事業を展開。グローバル楽器市場シェアNo.1を誇り、世界へ向けて「ヤマハならではの価値」を提供している。

体系的な学びにより知識を深化マネジメントの視点も整理

――「物流技術管理士資格認定講座」受講のきっかけは?

本社の物流部門である物流システム部へ異動となり、国際物流・販売物流を担当することになったのが受講のきっかけです。

当社では、工場内の物流、国際輸送、各市場での販売物流などの実際のオペレーションは、各拠点やグループ内のシェアードサービス会社、外部の物流事業者が担っています。そのため、本社物流部門の役割は自ら物流作業を行うことではなく、グループ全体を俯瞰した物流のマネジメントです。着任以前にも経営企画部や情報システム部など複数の部門を経験し、海外拠点のERP導入や欧州の物流拠点統合に携わっていましたが、物流システム部に来て、企画管理グループリーダーとして部門戦略の策定を中心に各施策の優先順位や方向性を整理する役割を担うことになり、物流はもちろん、ロジスティクスやSCM、経営との関係まで体系的に学びたいと考えていたところ、上司から本講座を紹介され受講しました。

(図)ヤマハ 物流システム部の活動領域
(図)ヤマハ 物流システム部の活動領域

――実際に受講してみていかがでしたか。

物流に関する専門知識が広がり、それ以前は「点」であった知識同士が自分の中で結びついて、より深く理解できるようになりました。リモートで講義を聞く際、その場で内容を整理しながらマインドマップやロジックツリーにまとめていたこともあり、講義が進むにつれてトピックごとに知識が積み重なり、別の講義で聞いた内容とのつながりも見えてくるなど、学びが深まっていくことを実感できました。他部門から見ていた物流を、受講によって鮮明にとらえられるようになったと感じています。

それだけでなく、講座で学んだロジスティクスやSCMなどの体系的な考え方を基に、輸送費削減や倉庫改善、KPI管理、標準化、物流事業者管理など、グループ内の各種施策をグローバル物流マネジメントの視点から自分なりに整理できるようになりました。例えば、工場の物流、国際物流、販売会社での物流などの「ネットワーク」という切り口や、本社主導か、物流部門が支援するタイプかなどの「運用体制」という切り口のように、いくつかの項目から各活動を分類することで、「この活動はどのようなもので、どのような目的に向かって、どのように進めていくのか」が把握しやすくなったのです。

これは、当時「本社物流部門として何を軸に物流をマネジメントすべきか」が明確でないと感じていた私にとって、非常に大きな成果でした。部内で施策について検討する際や、経営層に向けて進捗を説明する際にも、お互いが理解しやすくなったことで情報伝達がスムーズになりましたし、不足している要素も見出しやすくなったと感じています。

「SCMの中の物流」を意識し事象の源流を探る論文へ展開

――講義で特に印象に残っている内容はどのようなことでしょう。

印象に残っていることはいくつかありますが、その一つが、梱包の標準化の話題から「物事の川上に目を向ける重要性」について解説いただいたことです。目の前にある個々の現象や施策への対処では改善効果が限定的な場合も多く、その源流にまでさかのぼって着手しないと根本的な解決には至らないという話は、講座の中で度々言及された「ロジスティクスは経営課題である」という考え方とともに、強く印象に残っています。このことから、物流を輸送や保管といった個別機能としてではなく、ロジスティクスやSCM全体の中でとらえ、部分最適ではなく全体最適で考えることで、「なぜその問題が起きるのか」「どのような役割分担やルール、指標、情報の流れがその状況を生んでいるのか」をあらためて考えるきっかけとなりました。

例えば在庫についても、単なる削減目標ではなく、適正在庫の考え方や意思決定基準、部門間の役割、PSIプロセスまでさかのぼって課題をとらえるようになりました。この視点は、その後の業務で課題を構造的に整理する際の基本的な考え方にもなっています。

物流の「全体最適」と「問題の川上に遡る重要性」について学んだと語るヤマハ株式会社 中川 雅仁 氏

――執筆された修了論文は「優秀論文」に選ばれました。

「グループ在庫の適正化」をテーマに選んだのは、私が経営企画部にいた当時、売上以上に在庫が増え続け、削減が進まない状況に対して抱いていた疑問が出発点です。その背景を分析するとともに、輸送や倉庫の改善にとどまらず、より経営に近いテーマに取り組みたいという思いも込めました。

じつは、当初は「どうすれば在庫を減らせるか」という視点から論文構成を進めていたのですが、講座で学んだ在庫管理やSCM、全体最適の考え方を踏まえた結果、「ヤマハにとって適正在庫とは何か」「それを誰がどのような基準で決めるのか」という、より本質的な問いへと変わっていきました。これはまさに「現象面ではなく、その原因を探る」という学びが活きた結果です。

当社は生産・販売ともに海外比率が高く、世界各地の工場で生産した製品を各市場へ供給しています。楽器や音響機器は製品の種類が多く、需要の変動も大きい上、製品によっては手作業を要する工程も多く、製造リードタイムが長いものも少なくありません。さらに、様々な関係者に話を聞いてみると、在庫の削減が目標とされる一方で、販売会社では受注の機会を逸しないよう一定の在庫量を確保しておきたい意向が働き、製造会社では生産を平準化し効率を高めたいという事情もあることがわかりました。そこから適正在庫が組織として定義されず、関係部門で共有されていないという課題が見えてきたのです。

最終的に、適正在庫のルール作りや、そのルールに沿った業務プロセス、システム、管理組織の一体的な整備を提案する論文となりました。思いのほか高く評価していただき感謝しています。

優秀論文に選ばれた中川氏の修了論文はこちら

社内の物流情報基盤を整備学びの本質は他業務にも

――2024年からは物流システム部長も務められました。受講後はどのようなお仕事をされたのでしょうか。

物流の既存施策の位置付けを整理していく中で、不足している機能が明らかとなり、それがコントロールタワー構想を支える物流情報基盤の整備へとつながりました。これにより、海上輸送のトラッキング情報をはじめ、グローバルな戦略の立案・実行のために不可欠なグループ全体の各種情報が可視化され、いち早く諸活動へ落とし込めるようになっています。関連業者様との情報共有に活用しているほか、各担当者が必要に応じて個別に情報を収集・整理する手間もなくなり業務効率も大幅に改善しました。

――現在のお仕事はいかがでしょうか。

物流システム部長としてグループ全体の物流マネジメントを担当した後、2026年春からは5年半にわたって従事していた物流部門を離れ、業務本部企画管理部長として人事・総務、情報システム、品質保証、シェアードサービスなどを含む業務本部全体の企画・管理を担当しています。取り組む対象は変わりましたが、個別業務ではなく全体を俯瞰し、あるべき姿と仕組みを設計するという仕事の本質は、物流システム部時代と変わっていません。現在取り組んでいるAIを活用した業務改革でも、「業務のどの段階に関わるものなのか」「その前提となるスタッフの業務は、今後どう変わっていくのか」などを整理しながら、具体的な施策を推進するよう意識しています。

――受講を検討している方へアドバイスがあればお聞かせください。

この講座は、物流センターや本社物流部門などで、物流の企画・管理やマネジメントに携わる方に特に有益だと思います。物流を輸送や倉庫といった個別機能ではなく、SCM全体の中の一機能としてとらえ、物流全体をどのように設計・運営するかを考える立場の方には、多くの気づきが得られるでしょう。

講座では幅広い知識を学べますが、会社ごとに置かれている状況は異なるでしょうから、講義内容を自社の課題に置き換えて考えてみることをおすすめします。当時は私も、SCMの話を当社のグローバルネットワークに置き換えるなど、身近な実例と照らし合わせながら聞くよう意識していました。そうすることで知識を自分の中に取り込みやすくなり、講座で得た学びを自社に合った形で活かせるようになるのではないでしょうか。

物流の企画・管理層に向けた講座のおすすめ理由と、自社の課題に置き換えて学ぶアドバイスを語るヤマハ株式会社 中川 雅仁 氏

――最後に、中川様が考える「ヤマハの物流の理想像」をお聞かせください。

当社の事業構造を考えると、良い製品をつくるだけでなく、必要な製品を、世界各地の必要な市場へ、必要な時に、適切な状態とコストで届けることが、売上と顧客価値にとって不可欠です。その意味で物流は、単にモノを運ぶ後方機能ではなく、事業の競争力を支える重要な機能といえるでしょう。

そのうえで私が物流システム部長時代に目指していたのは、輸送や倉庫の個別最適ではなく、SCM全体の中で事業を支えるマネジメント機能としての物流です。時代の変化に合わせて柔軟かつタイムリーに事業活動を展開していくためには、本社、各拠点、グループ会社、物流事業者が共通のルールや情報に基づいて運営できる仕組みを整備し、全体として連携しながら取り組んでいくことが今後ますます重要になると考えています。

※取材は2026年8月5日に行われました。

2026.09.03 物流技術管理士資格認定講座