JILSニュース
2026.05.29 調査・研究

「ロジスティクスに関わる戦略とケイパビリティについての調査報告書」の公表

公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(以下、JILS)では、2025年度におけるロジスティクス経営指標調査の一環として、「ロジスティクスに関わる戦略とケイパビリティについての調査」を実施いたしました。
本調査は、物流危機やサプライチェーンの混乱への対応、物流効率化法への対応などを背景として、荷主企業におけるロジスティクスの経営的位置づけ、戦略の方向性、組織能力(ケイパビリティ)、財務・ESGパフォーマンスとの関係を体系的に把握することを目的として実施したものです。
調査は2025年11月13日から2026年1月30日の期間で実施し、121社から有効回答を得ました。このうち7社は、荷主企業の立場でご回答いただいた物流子会社および荷主以外の業種です。アンケートは、郵送、JILSのメールマガジン、ホームページ等を通じて広く回答を求めました。
JILSでは、2005年度より「経営におけるロジスティクス評価指標の研究」を重点課題として取り上げ、学識経験者や企業の実務家からなる委員会を設置し、ロジスティクス経営指標やロジスティクスKPIに関する調査研究を推進してまいりました。2022年度には「ロジスティクス経営指標(KPI)調査2022」を実施し、調査研究を発展させてまいりました。
今回の調査では、経営層の意識からロジスティクス戦略、ロジスティクス・ケイパビリティ、ESGパフォーマンス、財務パフォーマンスに至る一連の関係を検証する仮説モデルを設定し、アンケート結果および東京商工リサーチ(TSR社)の外部データを用いた分析を行いました。

あらためまして、アンケート調査にご協力いただいた企業の皆様、ならびに調査研究の推進にあたりご助言・ご支援をいただいた有識者各位に心より御礼を申し上げます。
ロジスティクスKPI調査2025「ロジスティクスに関わる戦略とケイパビリティについての調査報告書」は、こちらよりご利用ください。

解析結果の概略
本調査の分析編では、「経営意識・戦略」から「ロジスティクス戦略」「ロジスティクス・ケイパビリティ」を経て、「ESGパフォーマンス」「財務パフォーマンス」に至る仮説モデルを設定し、Spearman順位相関分析および独立2群のt検定(Welchの方法)により、各変数間の関係を検証しました。なお、本調査は相関関係および群間差を分析するものであり、因果関係の方向を直接特定するものではありません。

ロジスティクス・ケイパビリティはESGパフォーマンスと強く関連
仮説モデル上の主要な変数間関係のうち、特に明確な関連が確認されたのは、ロジスティクス・ケイパビリティ総合指標とESGパフォーマンス総合指標の間でした。両者の間には、ρ=0.536(p<0.001)の正の相関が確認され、ロジスティクス・ケイパビリティの水準が高い企業ほど、ESGパフォーマンスの自己評価も高い傾向がみられました。
一方、ロジスティクス・ケイパビリティ総合指標と財務パフォーマンス指標との直接的な関連は確認されませんでした。これに対し、ESGパフォーマンス総合指標と財務自己評価総合指標との間には、ρ=0.644(p<0.001、n=42)の強い正の相関が観察されました。

これらの結果は、ロジスティクス・ケイパビリティが財務パフォーマンスへ直ちに直接結びつくというよりも、ESGパフォーマンスを通じて、企業価値に関わる成果と関連する可能性を示唆しています。

サステナビリティ対応能力が重要な役割を担う可能性
個別のロジスティクス・ケイパビリティ項目では、サステナビリティ対応能力とESGパフォーマンス総合指標との関連が最も強く、ρ=0.591(p<0.001)でした。環境負荷低減、労働環境改善、サプライチェーン上の社会課題への対応などを含むサステナビリティ対応能力は、ロジスティクス・ケイパビリティとESGパフォーマンスを結びつける中核的な能力であることが示唆されます。

ロジスティクスの経営的位置づけが、他領域での効果を左右する可能性
補足分析では、経営理念上の重視ステークホルダー、重視する価値・原則、経営戦略上の重要機能領域の選択と外部業績指標との関係を、ロジスティクスの経営的位置づけの高低別に検証しました。

その結果、デジタル・IT(DX)を重要機能領域として選択した企業では、ロジスティクス重視度の高い企業群においてのみ、売上高利益率およびTSR評点が有意に高い傾向がみられました。一方、ロジスティクス重視度の低い企業群では、デジタル・IT(DX)選択企業の売上予測スコアが低いという対照的な結果が得られました。
また、資本提供者(株主・投資家・金融機関)を重視する企業や、イノベーション・挑戦を重視する企業についても、ロジスティクス重視度の高い企業群において財務指標との正の関連がみられました。

これらの結果は、DX、資本効率、イノベーションなどの経営戦略が財務成果に結びつくためには、ロジスティクスを単なる現場機能として扱うのではなく、経営戦略と接続された基盤機能として位置づけることが重要である可能性を示しています。

本調査に関する問い合わせ先
公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会 JILS総合研究所 調査担当者:三谷(みたに)まで
〒105-0022 東京都港区海岸1-15-1 スズエベイディアム3F
E-Mail mitani★logistics.or.jp (★を@に変更願います)